株式会社ビジョン・コンサルティング

事業内容

戦略コンサルティング、業務コンサルティング、ITコンサルティング、システムインテグレーション、新規事業開発

代表取締役社長

佐藤 大介

SNS

2024.12.25

「ソリッドベンチャーとしてのビジョン・コンサルティング」著者の視点

スタートアップの世界では、ベンチャーキャピタル(VC)からの大型調達を受けて急拡大を目指す企業モデルが注目されがちです。

しかし近年、自己資金や着実な事業運営によって、堅実に売上や利益を積み上げつつ新規事業を起こしていく「ソリッドベンチャー」という形態が再評価されつつあります。

ソリッドベンチャーは、大きな赤字を掘る前提ではなく、既存事業でキャッシュを得ながらジワジワと新しいサービスを立ち上げるという経営スタイルを特徴としています。

本記事では、その一例として「株式会社ビジョン・コンサルティング」(以下、ビジョン・コンサルティングと略記)を取り上げます。

同社は創業以来、外部資金調達を行わずに堅実なコンサルティング事業を基盤に事業を多角化し、実績を伸ばしてきました。ここでは、同社の創業背景から事業成長の軌跡、そしてソリッドベンチャーとしての意義や可能性を分析します。

企業概要と創業期

会社概要

  • 会社名:株式会社ビジョン・コンサルティング
  • 代表者名:佐藤 大介(代表取締役)
  • 公式URLhttps://visioncon-global.com/

同社は、主に中小企業向けの経営コンサルティングを核としながら、近年では人材育成事業やM&Aアドバイザリーなど、クライアント企業の課題を総合的に解決するためのサービスを多角的に提供しています。

創業背景

創業者である佐藤大介氏は、大手コンサルファームで10年以上の実績を持つコンサルタントでした。しかし、大企業向けのコンサルティングに特化した既存ファームの在り方に疑問を持ち、「より社会に役立ちたい」「日本の経済を支える中小企業を元気にしたい」という想いから独立を決意。

大企業ではなく中小企業の経営課題を本気で解決するという強いミッションのもと、ビジョン・コンサルティングを設立したといいます。

創業当初の事業モデルは「中小企業向け経営コンサルティング」であり、その対象業種は製造業やサービス業が中心でした。

大企業向けコンサルに比べると、アカウント単価は低く見えがちですが、中小企業の経営者との距離感は近く、密接な関係と長期的なリレーションを築けることが同社の強みになっていきます。

ソリッドベンチャーとしての特徴

外部資本に頼らない事業成長

同社がソリッドベンチャーと呼べる最も大きな理由は、「外部資金を調達せずに自社の事業から生み出した利益を再投資し続けている」という点です。

ベンチャー企業の場合、シリーズA/B/Cと段階を踏んで多額の増資を行い、そのキャッシュで広告投下や採用を加速させ、大きなJカーブを描くモデルが定番です。しかしビジョン・コンサルティングは、いわゆるそうしたエクイティ・ファイナンスを行っていません。

  • 理由1:代表の佐藤氏が「自分たちの経営理念やサービスの方針をブレさせたくない」という想いが強かった
  • 理由2:創業期からコンサル業が堅実にキャッシュを生むビジネスだったため、わざわざ外部に頼らなくても成り立った

コンサルティング事業は人件費こそかかるものの、在庫リスクがほぼなく、売上が安定しやすい利点があります。ただし、営業力とリピート顧客をつかむ力が不可欠。

ビジョン・コンサルティングは、創業者の個人ネットワークによる案件獲得からスタートし、そこで生まれた収益を新規事業へ投資する、いわゆる「ソリッドな成長」を続けています。

ジワ新規的な事業多角化

ソリッドベンチャーの真髄は、既存事業で培ったナレッジや顧客基盤をレバレッジにして「無理のない新規事業」を少しずつ拡張していくことです。ビジョン・コンサルティングの場合、以下の流れで事業多角化を成し遂げています。

  1. 経営コンサル
    • 主体となるコンサル業務:中小企業の事業計画策定、業務改善支援、人事評価制度の構築、IT導入など
    • 代表直下で案件を回しつつ、徐々に優秀なコンサルタントを増員
  2. 人材育成事業
    • コンサル先の企業経営者・管理職向けに研修やセミナーを提供
    • これにより、単発のコンサル提案から「組織全体の学習・変革支援」へと横展開
  3. 組織開発・M&Aアドバイザリー
    • 顧客企業との信頼関係を背景に、組織風土改革やM&Aの仲介/アドバイザリーも受託
    • 中小企業は後継者不足や事業承継に課題を抱えがち。そのニーズをカバーしつつ新たな収益源を確保

このように、「顧客が本当に求めるもの」を身近で観察しながら、徐々に新規サービスを立ち上げる流れはソリッドベンチャーの典型といえます。外部投資家に急かされることなく、中長期視点でサービスを育てられることが強みになっています。

ソリッドベンチャーとスタートアップモデルの比較

ここで改めて、ビジョン・コンサルティングのようなソリッドベンチャーと、いわゆるVC型スタートアップを比較してみます。

  1. 資金調達
    • VC型:シリーズごとに数億〜数十億円の資金を調達し短期的に急拡大を目指す
    • ソリッド:既存事業の黒字やデットファイナンス(銀行借入など)を活用し、赤字を大きく掘らない
  2. 新規事業の進め方
    • VC型:仮説を作り、MVPを素早く検証→当たれば投資を一気に拡大
    • ソリッド:本業でキャッシュを稼ぎつつ、顧客ニーズを踏まえて堅実に展開→当たってから拡大投資
  3. 経営方針の安定性
    • VC型:投資家の期待リターンやEXIT期限に縛られがち
    • ソリッド:外部投資家がいないため「理念」「経営判断」を自社内で完結可能

ビジョン・コンサルティングはまさにソリッド型であり、コンサルという収益性の高い業態を最大限活かしているのが特徴といえます。

市場と競合環境

中小企業向けコンサル市場

経営コンサルティング業界は大手ファームからフリーランスコンサルタントまで競合が多数存在し、まさに「レッドオーシャン」だとも言われます。

ただし、大手ファームは大企業を中心に支援する傾向があるため、中小企業向けコンサルは比較的プレイヤーの乱立度合いが低い面もあります。ビジョン・コンサルティングはそこに活路を見出しました。

  • 差別化1:徹底した“伴走型コンサルティング”。短期的な提言レポートだけでなく、実行支援まで併走する
  • 差別化2:成果報酬型の料金モデルも採用し、顧客の負担を低減させる

加えて、近年では海外進出支援(アジア・北米など)にも注力し、グローバルな事業展開を視野に入れているようです。中小企業でも海外のサプライチェーンや輸出入に関わりがあるケースが増えており、そこを取り込むことでビジネスチャンスを創出しています。

失敗事例と学び

ソリッドベンチャーであっても、新規事業がすべて成功するわけではありません。むしろ失敗を適切に回収し、ノウハウ化することで、新たな成長に結びつけることが要点です。

ビジョン・コンサルティングでは、過去に新規事業の立ち上げが上手くいかず、撤退を余儀なくされた経験があるとされています。具体的には、

  • 市場調査不足:サービス拡張に意欲的になりすぎて、市場規模を誤って過大に評価した
  • リソースの分散:コンサルタントを本業・新規事業に兼任させすぎて生産性が低下し、どちらも伸び悩んだ

こうした失敗を経て、事業立ち上げ時は必ず「細かいPoC(概念実証)」「綿密なリサーチ」「最低限のアセットでMVPを作る」を徹底するようになったと考えられます。

ソリッドベンチャーは赤字を許容しにくい構造ゆえ、失敗への許容量がVC型より小さいともいえます。しかし、この制約があるからこそ、成功確度の高い事業を根気よく育てる方向に力を注げる、という見方もあります。

ビジョン・コンサルティングの今後

  1. さらなる事業拡張
    • 本業のコンサルティングが成熟フェーズに入る中、新規のM&Aアドバイザリーや海外進出支援はさらなる可能性を含んでいる。中小企業のオーナー経営者向けには事業承継・M&Aが今後も需要拡大が見込まれ、そこで“伴走型”サポートを行う余地は大きい。
  2. ヒトの確保と組織づくり
    • コンサル会社としては人材採用と育成が継続的な最重要課題となる。本来は外部投資による資金を活用して大量採用する手もあるが、ソリッドベンチャーの路線を貫くなら、利益を上回る無理な採用はできない。結果として、急激な肥大化を避けつつ、質の高いコンサルタントを厳選して組織を拡大する流れが続くとみられる。
  3. 海外ネットワークの活用
    • グローバル展開には時間とコストがかかるため、ソリッド型の経営を続けるビジョン・コンサルティングにとっては慎重な見極めが必要。ただし、中小企業の海外進出案件が着実に増加しており、ここを獲得できれば安定収益に繋がる見込み。既存顧客の海外ニーズに応じる形でジワジワ広げる手法が有効と考えられる。

ソリッドベンチャーとしての示唆

ビジョン・コンサルティングの事例から得られる示唆を総括すると、以下の通りです。

  1. 既存事業がキャッシュを生む業態からスタートする
    • コンサルや受託開発、人材ビジネスなど、受注すれば利益が出やすいモデルが軸になると外部資金に頼りにくい初期段階をしのげる
  2. 既存顧客との深い関係が強力なレバレッジを生む
    • 中小企業向けのコンサルを行う中で「組織開発」「人材育成」「M&A」などの派生ニーズが見込める。そこへ新規事業として進出すれば、初期から一定の売上が期待できる
  3. 失敗を許容できる範囲で新事業にチャレンジし続ける
    • ソリッド型でも失敗はあるが、赤字を垂れ流す構造ではないので、比較的軟着陸がしやすい。むしろ失敗することで長期的にはノウハウが蓄積され、次の成功確率が上がる
  4. 無理な拡大をせず、理念を崩さない
    • VC資金や外部投資家からの強いリターン圧力がないため、経営理念や顧客本位の姿勢を崩さずに成長できる。これは経営者の理想とされる場合が多いが、同時に大きな資本を使ったイノベーションや爆発的スケールはしづらい、という点とのトレードオフがある

株式会社ビジョン・コンサルティングは、大手コンサル出身の佐藤大介氏が「社会貢献」と「中小企業支援」を主軸に創業した、いわば「コンサルティング型ソリッドベンチャー」です。同社が示す特徴は以下の通りです。

  1. 外部資本に依存せず、コンサルで得た利益を新規事業に再投資
  2. 顧客ニーズを掘り下げることで、人材育成・組織開発・M&Aアドバイザリーへと多角化
  3. 規模を追い求めすぎず、失敗を糧にしつつも安定成長を実現

ソリッドベンチャーは華々しい資金調達ニュースが出づらいため、「スタートアップが盛んなメディア環境」の中ではやや目立たない存在になりがちです。

しかし、こうした企業は倒産リスクが低く、経営陣の理念やビジョンを忠実に実行できる利点があります。ビジョン・コンサルティングのように、本業の黒字経営と着実な顧客拡大を土台にしながら、コア事業とシナジーの高い領域へ拡大していく例は、今後さらに増える可能性があります。

日本の社会において、中小企業支援の領域はまだまだ課題が山積しており、ビジョン・コンサルティングのような「伴走型コンサル」が求められるケースは多いはずです。

この事例は、外部投資を受けずとも大きくなり得る1つのモデルケースとして、多くの起業家や経営者にとって示唆を与えてくれることでしょう。

最後に、ソリッドベンチャーという視点で眺めれば、ビジョン・コンサルティングの成長軌跡は“既存事業の着実な利益”と“顧客基盤から生まれる新規事業の需要”を巧みに結びつけている点が見て取れます。

今後、AIやDXの波がよりいっそうビジネス環境を変えていく中で、同社が中小企業をどう支えていくのかが注目されます。

創業当初から貫いてきた「中小企業の成長こそが日本経済の土台になる」という信念を軸に、さらなる事業拡張を図るビジョン・コンサルティングは、まさにソリッドベンチャーの好例といえます。