株式会社True Data

事業内容

全国の消費者購買データを扱うビッグデータプラットフォームを運営。POS/ID-POSなど消費者データ分析や購買行動分析ソリューションを小売業、消費財メーカー等に開発・提供。データマーケティング支援。

代表取締役社長

米倉 裕之

2012年12月に当社の代表取締役社長に就任。大企業から地域の中小企業までデータを活用して強くなれる社会を目指し、オープンで中立的な立場のビッグデータマーケティング企業として当社ビジネスモデルを構築。経済産業省の「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化 研究会(消費インテリジェンス研究会)」委員、日本政策投資銀行「競争力強化に関する研究会」アドバイザー等を歴任し、現在は地域でのデータ人材育成を目指す一般社団法人ビッグデータマーケティング教育推進協会(略称 Dream) 専務理事としても活動。データとテクノロジーと人の知恵による、社会課題の解決を目指している。当社への参画前は、東京海上日動において海上保険、経営企画、米国派遣、ブルッキングス研究所客員研究員を経験。GEコンシューマー・ファイナンスに転じ、マスターブラックベルトとして事業再編に従事した後、ぐるなびで新規事業開発等を担った。神奈川県出身。東京大学農学部卒業。

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2024.12.25

「ソリッドベンチャーとしての株式会社True Data」著者の視点

株式会社True Dataを分析し、その創業期から成長戦略、事業多角化のプロセスを探っていきます。

ソリッドベンチャーとは、ベンチャーキャピタルなどの外部資金へ過度に依存せず、自己資金や事業からのキャッシュフローを再投資することで堅実に成長する企業を指す場合が多いですが、True DataはIPOも行っています。

一方で、創業期にはPOSデータの分析事業を軸に独自のサービスを構築し、自己資金による拡大から徐々に外部資金を取り入れてスケールアップしていった点から、“ソリッドベンチャー的”要素を有する事業モデルがうかがえます。

本記事では、同社の事業モデル、資金調達戦略、そしてデータビジネス領域での多角化要因などを整理し、「データとテクノロジーで、世界をより良く」というビジョンを実現しつつある要因について詳しく考察します。

創業期のビジネスモデルと背景

POSデータ分析から始まったTrue Data

株式会社True Dataの源流は、2000年10月に創業された企業に遡ります。小売業や消費財メーカーに対し、POS(販売時点情報管理)システムから得られる購買データを分析し、顧客・消費者の行動や購入動機を読み解くサービスを提供していました。

なぜPOSデータ分析が注目されたのか

  • 実購買データの重要性:インターネットがまだ本格普及期の2000年前後でも、小売店や量販店などリアル店舗の購買データは企業の戦略に欠かせない情報源。
  • マーケティングの質的転換:従来の棚卸・売上管理から一歩進んで、「どの顧客層が何をいつどこでどのように買っているのか」を定量分析することで、きめ細かなマーケティング施策が可能となった。

創業期には自己資金ベースで事業を進め、POSデータの分析ノウハウを構築。ここがTrue Dataのコアコンピタンス形成の出発点となります。

代表取締役社長・米倉裕之氏の経歴

現在の代表取締役社長である米倉裕之氏が就任したのは2012年12月。創業者とは異なる人物が経営トップに就き、そこからビジネスを急拡大させています。

  • 東京海上日動でのキャリア:海上保険、経営企画、米国派遣、ブルッキングス研究所客員研究員など、多方面で活躍。
  • GEコンシューマー・ファイナンス:マスターブラックベルトとして事業再編を経験。GE流のプロセス改善手法(シックス・シグマ)を習得。
  • ぐるなびでの新規事業開発:飲食店のデータベース構築やネット上での展開に携わり、データ分析を基盤としたビジネスモデルの知見を深める。

このように、金融・コンサル・データ活用のスキルを兼ね備えた人物が社長に就任したことによって、True Dataは「POSデータ分析」から「ビッグデータマーケティング企業」へと徐々に進化していきました。

ソリッドベンチャーとしての成長戦略と資金調達

自己資金からの出発

True Dataは、創業当初から自己資金で活動を開始し、POSデータ分析サービスをコツコツ拡充していきました。当時はデータ分析やコンサルティング需要が徐々に高まっていた時期であり、大手企業がこぞって自社の顧客データを活用し始めるタイミングでした。

小売業や消費財メーカーへの導入実績が積み重なるとともに、販促施策や在庫管理の効率化など、具体的な成果を創出したことで事業基盤を確立していきます。

外部資金とIPOへの道

とはいえ、ビッグデータを扱うためには、大規模なITインフラの構築データセキュリティの確保が必要となり、一定の投資が避けられません。事業拡大にともないタイミングをみて複数回のエクイティによる資金調達を行っています。

これらの増資によってTrue Dataはサーバーやクラウド基盤を充実させ、さらにデータサイエンティストやマーケティングコンサルタントを採用することでサービス品質を向上させました。結果、2021年12月16日には東証マザーズ(現グロース)市場に上場し、さらなる資金調達と知名度向上を実現しています。

ソリッドベンチャー的視点

元来、ソリッドベンチャーは自己資金で起業してスモールスタートし、利益を再投資しながら地道に成長する企業が多いです。True Dataの場合、創業期からPOSデータ分析による安定した収益を確保しつつ、後にビッグデータプラットフォーム化の拡張で大きく投資を要する段階になったときにシリーズA~Cの資金を調達。

そのうえでIPOを果たしたというプロセスは、ソリッドベンチャーと外部資金活用のハイブリッド型といえます。すなわち、「基礎事業でキャッシュを生み出す→その強固な基盤をベースに大規模調達→ビジネスを一気に拡大」というパターンです。

事業の多角化とビッグデータプラットフォームの構築

6,000万人規模の消費者購買データ

True Dataの特徴は、全国規模の小売店舗から集めた購買履歴データを統合したビッグデータプラットフォームを保有している点です。

  • 6,000万人規模の消費者購買データをカバーし、ID-POSデータ分析や購買行動分析など多彩なサービスを展開。
  • これによって、従来のPOSデータ分析にとどまらず、地域別・店舗別の消費動向顧客の購買パターン新商品の需要予測など、より高度なマーケティング支援が可能になりました。

データドリブンな社会への貢献

「データとテクノロジーで、世界をより良く」というビジョンを掲げる同社は、小売・メーカーだけでなく、金融機関、官公庁、地方自治体などにもサービス提供範囲を広げています。

  • 官公庁・自治体向け:消費者行動データを元にした地域経済分析や観光施策への活用支援。
  • 金融機関向け:信用力評価や融資判断に役立つ購買データの提供。
  • 消費財メーカー向け:新商品開発や販促効果測定のための購買行動データ活用。

このように、多業種・多部門がTrue Dataのプラットフォームを通じてデータ活用する構造が整い始めています。

事業多角化の成功要因

  1. データ分析技術とコンサルティング expertise の融合
    真に顧客が求めるのは「データ分析の結果だけ」ではなく、その結果をどうビジネス戦略に落とし込むか。True Dataは、POSデータ分析からスタートし、コンサルティング領域にも踏み込むことで、顧客の具体的課題に深く対応できるサービスを提供しています。
  2. オープンで中立的な立場
    特定の小売チェーンや特定メーカーの完全子会社ではなく、「ビッグデータマーケティング企業」として中立的なポジションを維持。これにより、多数の企業からデータを収集し、一元的な分析を提供できる仕組みが成立しています。
  3. 信頼とセキュリティ
    ビッグデータを扱ううえでセキュリティやプライバシー保護が最重要課題。True Dataは過去の実績と高度なセキュリティ体制を構築し、法人・個人双方のデータを安全に管理することで、信頼を得ています。

ソリッドベンチャーとしての視点から見たTrue Dataの意義

自社のコア事業を活かした拡張

ソリッドベンチャーの基本は、中核事業で稼いだキャッシュを次の事業に再投資し、安定的に拡大する姿勢です。True DataはPOSデータ分析の成功で得た顧客基盤・収益基盤を活かし、ビッグデータプラットフォーム構築への大きなステップに踏み切りました。

  • 本当にデータを必要とする顧客セグメントの課題解決に資するサービスを順次開発。
  • 投資負担が増える段階でVCやその他からの資金を調達し、ソリッドベンチャーの安定感とベンチャーキャピタルのスピードアップ効果を両立。

IPOによる社会的信用とリソース拡充

2021年12月の東証マザーズ上場は、社会的な認知度や信用度を飛躍的に高め、各産業界へのアプローチを加速しました。データビジネスは信頼性が非常に重要なため、上場企業としてのコンプライアンスや透明性が高評価に繋がり、さらなる大型案件や提携にも有利に働きます。

ソリッドベンチャーは必ずしも上場を目指すわけではありませんが、True Dataの場合、事業上の必然性からIPOに踏み切ったことが好影響をもたらしていると言えます。

株式会社True Dataは、2000年の創業以来、POSデータ分析を中核に据えながら、地道に収益を積み上げてきました。

いわゆるソリッドベンチャー的に自己資金ベースで始まった事業は、ビッグデータプラットフォームの開発・運用における大規模投資フェーズを迎えた際に、複数回のラウンドで資金調達を行い、さらに2021年12月には東証マザーズへの上場を果たしています。

これは、ソリッドベンチャーの特性(安定成長)と、資本市場からの資金を得ることでスケールアップするベンチャーの特性との両方を巧みに組み合わせた成長モデルといえます。

True Dataの成功要因

  1. 創業時のPOSデータ分析技術を活かし、コツコツと顧客企業を増やしていったことで基礎的な収益基盤を構築。
  2. 外部資金調達を要する局面になってからVCやIPOを活用し、大規模な投資(IT基盤、人材確保、ビッグデータプラットフォーム整備)を実施。
  3. オープンかつ中立的なポジションを維持することで、多くの小売・メーカー・金融機関・官公庁などと連携し、膨大なデータを収集・分析できる強みを獲得。
  4. マルチな経歴を持つ経営陣(米倉氏など)の参画が、データ分析におけるコンサル要素・AI技術要素などを加速させ、さらなる差別化を実現。

創業期の自己資本での運営→事業収益の積み上げ→適切なタイミングでの大型調達→上場という一連の流れは、過度な出資依存に陥ることなく着実に事業を拡大する優れたロールモデルです。

今後もPOSデータやID-POSを基盤としたビジネスの成長は続くと予測され、同社の新サービス開発や異業種提携が進む中で、真のデータ社会を先導する存在になっていくことが期待されます。