2024.10.21
23(トゥースリー)株式会社
Z世代クリエイター80名以上で構成されるクリエイティブ制作会社。幅広いスキルセットを持つクリエイターが在籍しており、WEBやアプリ開発、動画制作などを提供している。2023年より(株)キャリタスにグループ入り。
U-25のZ世代のクリエイターをコストほぼゼロで組織化
ー今日は23清水さんにお越しいただきました。23の過去・現在・未来の切り口で事業などについてお聞きできればと思ってます。よろしくお願いします。
23株式会社 清水 淳史 氏(以下、清水さん):23の清水と申します。23という会社はクライアントワーク、とりわけクリエイティブに関するクライアントワークを行ってます。クリエイティブといってもウェブ、動画、アプリ開発など幅広く行っております。
特徴としてはZ世代のクリエイターを中心としたクリエイティブ集団と発信をしています。U-25のZ世代のクリエイターが集まっており、23は彼・彼女らを組織にしながら制作を行っている会社です。福岡を活動拠点にしてますが、メンバーや業務委託の方々にはオンラインで活動できるようにしています。
ーU-25ということですが、一番年齢が低い方はどれくらいの年齢なんですか?
清水さん:18歳の方ですかね。大学に入りたて、もしくは高専生もいらっしゃるので大学に入る前です。
ーそのような方々にはどのように接触しているんですか?
清水さん:本当にいろいろな経路で入っていただいています。王道にリファラルもありますが、最近だとダイレクトリクルーティングのパターンが増えてきています。
クリエイターの方々はご自身の活動をSNSで発信する時代になってきているじゃないですか?Xやインスタグラムなどで。そのような発信を弊社の方で拝見させていただき、「この人とぜひ一緒にやってみたい」という方にSNSを通じてダイレクトにコンタクトをしていたりします。
ー雇用形態は業務委託になるんですか?
清水さん:そうですね。いま正社員は7名で、残りは業務委託です。全体で90名ほどで、ほとんどが25歳以下。僕はいま(2024年7月時点)27歳になってしまっていて25歳以下から少し出てしまっているんですが、一部そういった例外はありつつ、ベースはU-25世代です。
2回目の起業。優秀な友人と仕事がしたかった
ー23は清水さんにとって何回目の起業なんですか?
清水さん:二回目になります。23の起業が大学4年生に上がるタイミングでしたが、1社目・2社目ともに学生起業で始めています。
1社目は、23と同じ福岡本社としたドローンのスタートアップで取締役をやっていました。ドローンといっても機体を作っている会社ではなく、ドローンが飛ぶために必要な権利を売り買いするという珍しい事業モデルのスタートアップでした。
ドローンが飛ぶ空の権利というのは、基本的に土地の所有者が権利を持っていることになっています。逆手に取ると、ドローンがいろんな場所を飛び回る世界になったとき、この権利問題が出てくるだろうと考えていました。土地の所有者が持っている空の権利をマーケットで貸し借りできるようにしてしまう、というアイディアです。
ドローンを活用した物流や空飛ぶ車、そういったものが実現されるまでに、空の道を作っていこうというビジョンでやっていました。
その後、23の立ち上げは僕がCEOとして始めました。2020年9月のコロナ禍真っ只中でした。当時、僕は東京にいたんですが、大学に復学をしようと東京から福岡に戻ってきていました。
帰省して改めて分かったのですが、周りにいたエンジニアやデザイナーは本当に素晴らしいスキルを身に着けた方たちがたくさんいるということ。そういった友人たちと一緒に仕事をしたいというところから23創業の形が作られていきました。
ー2020年創業で今年4年目になると思うんですが、これまで順風満帆だったんですか?
清水さん:決算書だけみると順風満帆に見えるかもしれないですが、学生の方たちと一緒に連携しながら仕事をするということはいまでも悩みながら進めています。
クリエイティブのスキルに対してどうこうみたいなのはないんですが、どちらかといえば「ビジネスとは」ということをまだ理解していない方たちが中心であり、そのあたりの難しさは日々感じています。
ー拠点が福岡ですが、お客様はどのようなところが多いんですか?
清水さん:いまは福岡と東京に拠点があるので、その二つが軸にはなっていますがお客様の層は幅広く、エリアや業界は問わずです。
ークリエイティブ×制作の領域にした理由って何かあるんですか?
清水さん:2020年に復学した時に周りにいる友人が、たまたまデザイナー、エンジニア、動画クリエイターなどいろんなスキルを持った人がいて、彼らができることを企業から仕事をもらってやっていくっていうのを愚直に積み重ねていった結果ですかね。これらの取り組みを広く括ると「クリエイティブ制作だよね」と。
ー清水さんが九州大学の芸術工学部、いわゆるデザイン関連だったというのもありそうですね。ちなみに、創業当初は清水さんが営業として顧客開拓されてたんですか?
清水さん:はい、僕自身が動いてました。2020年当時、2024年と比較をしても「Z世代」というのがバズワードになっていたと思ってます。福岡って若手の起業家を応援するみたいなところとかあって、若手に対してチャンスを与えてくれる機会を本当にたくさんいただきました。その結果が仕事につながってました。
資金調達は是々非々で、ただこれまでは必要性を全く感じていなかった
ー事業を始めてから組織はどんどん拡大していったと思うんですが、創業当初から意図的に広げていこうと考えていたんですか?それとも顧客ニーズにこたえる形で業務委託の方を増やしていき、結果的にいまの組織になったんですか?
清水さん:後者ですかね。僕自身、デザインスキルをバックグラウンドにもっていたので最初はデザイン軸とアタリを付けて始めていました。ただ、市場との対話で開発ニーズの方が高いということに気づきました。
かたや僕たちの周りにいる大学生は、一般的な開発会社に引けを取らないようなスキルを持ってる人たちがたくさんいました。エンジニアリングにニーズがあるとわかり始め、その中で実際にエンジニアリング関係の仕事をたくさんいただくようになりました。
仕事が増えていくのと同じスピードでエンジニアの方たちもどんどん増えていった、という流れでした。
ークライアントワークをやってると売上と利益が積み上がっていくと思います。ただ市場のニーズが高まっているのも感じていた。そのタイミングで市場を一気に獲得するためにエクイティファイナンスをしようとは思わなかったんですか?
清水さん:必要性が僕自身の中ではなくなかったので、考えたことは全くありませんでした。
ーエクイティファイナンスをすると、例えばエグジットをしなければいけないなどの縛りが出てきてしまうから必要性にメリットが感じられなかったのか、それとも会社として基本的にキャッシュが回り続けているため必要性がなかったのか、どちらなんですか?
清水さん:それでいうと後者に近い形かなと。正直、お金の投下先がなかったのが大きいと思います。
事業はクライアントワークが中心のため事業投資のニーズはなし。またクリエイターの方たちはSNSやリファラルで増やしているため採用コストはほぼゼロ。外部のクリエイターの方たちは業務委託がベースになっているのでランニングコストもほとんどありません。
なので、基本的に売上が立っていれば、特段資金調達って必要がなく、頭の中に想いもつかなかった感じです。
ー今後も資金調達はしない方向性なんですか?
清水さん:いまお話していたのは「これまでの23」の事業展開で、これからはこれまで培ってきた我々の強みやネットワークを5年10年スパンで自分たちのプロダクトに落とし込んでいきたいと考えています。
新しいプロダクトをグロースさせるためには、これまでの考え方や戦い方をガラッと変えてアクセルを踏めるようにしなければなりません。なので、その過程で資金調達の選択肢もあると思います。
会社として昨年2023年3月に売却をしているので、まず目の前は親会社のリソースを借りながらやっていきます。新しい取り組みについては、ターゲット・市場・攻め方までを考えていますがプロダクトまで落とし込める状態ではないのが現状ですが。
ただ、新しい取り組みを考えるときに売却前と売却後で明確に違うことがあります。それは、大企業のリソースも加味して考えられること。
我々スタートアップとしてできる強みを生かしつつ、大企業の営業リソースやお金の面など複合的に組み合わせながら戦うことができるのは大きく変わったなと思います。
社員ゼロのクライアントワークの会社を売却できた理由
ー大企業へのグループインは当初から考えていたことなんですか?
清水さん:創業時は全く考えていませんでした。そもそも創業経緯が「大学の同級生や友人と一緒に仕事できたらいいよね」で設立していたので。しかし、2年ほど経ったタイミングから徐々に考え始め、2年半たったタイミングでご縁があり売却となりました。
売却検討についてはいろいろあるんですが、大きくあるところとして23を2年間経営する中で感じていた成長角度です。
会社として数字は積み上がってはいたものの、事業の軸はクライアントワークを中心とした受託制作です。つまり、自分たちの労働に対して対価をもらう構図なので、どれくらい時間を使って働けるかの勝負になっていました。
2年間続けていて、この構造は今後3年、4年、5年とつづけていったとしても大きく変えることは難しい。もちろん、会社として少しずつ成長していましたし、成長すると思っています。けれど、この成長角度は自分たちの望む姿なのかと聞かれると正直違う気がしてました。
また、それこそ先ほどお話したように、プロダクトを作ってグロースさせていくとなったときには大企業のリソースを使っていった方がアクセルを踏みやすいというのもあり、会社を売却する選択肢を入れながら動いていました。
3年目を迎えたところで、すんなりと今回のグループインにつながった、そんな経緯です。
ーグループインのときに創業メンバーは何人かいらっしゃったんですか?
清水さん:かなりイレギュラーな形だと思うんですが、売却したときには僕しかいなかったんです。なので、役員や社員という概念が一切ありませんでした。実態としては正社員に近いような動きを皆さんしてくれていたんですが、プロジェクトマネージャーなどのマネジメントする立場の方たちも業務委託契約でお願いをしていました。
ー面白いですし、めっちゃ珍しいですよね?
清水さん:いろんな観点から珍しいと思うんですが、一番珍しいのが「社員ゼロのクライアントワークの会社を買収した」という点かなと。
これってあんまり例がないと思っています。僕たちは、一応Z世代のクリエイター集団と発信しており、実際にSlackを中心としたコミュニティは存在していますが、見方によっては無形の資産。コミュニティ所属に何かしら縛りがあるわけではないんですが、そこを見込んで買っていただけたっていうのは本当にありがたいです。僕たちの事例のようなものが今後出てきてほしいです。
買収理由を改めて客観的に考えると、学生の方に仕事を依頼してちゃんとしたクリエイティブが出てくるという仮説検証がしっかり終わっていたこと、いろんな大手企業をはじめとした実績も出てきていたこと、発注先が学生の方なので比較的かかるお金としては安いということ、このような点からビジネスとして特徴的な受託制作の会社だったからかなと。
加えて、売却した先が新卒採用を行っている会社でした。新卒採用の市場、つまり学生をターゲットとしているため、学生が制作をするというのがマッチしたんだと思います。
売却って1社だけ見つかれば終わりじゃないですか。グループインした親会社が当時求めていた制作会社の像が本当にばっちり合ったことが一番でした。
第二創業期に向けて
ー23の未来についてどのように考えているか教えてください。
清水さん:お話している通り、自分たちで作ったプロダクトを広めていきたいと思っています。23はいまが第二創業期になっている認識をしてまして、これまではクライアントワークを中心にしていた会社だったのものから、自社プロダクトを広めていく方向に舵を切っています。
なので、会社のカルチャーやプロダクトの方向性をガラッと変えていくフェーズになっていくと思います。第二創業期としていろんなものを新しく積み上げていき「23ってこんな会社だよね」という像をイチから作っていくのが、難しい取り組みかもしれないですが、楽しみでもあります。
ーありがとうございました。また話を聞かせください!