株式会社TWOSTONE&Sons

事業内容

ITを活用したサービス事業

代表取締役CEO

河端 保志

電気通信大学大学院在学中に、「エンジニアの価値向上」を目指して株式会社Branding Engineer(旧社名)を創業、代表取締役CEOに就任。代表取締役CEOとして、会社の先頭に立ち新規事業の立案や企業との提携など、自ら会社の成長をけん引。2020年7月に東証マザーズ上場を達成。2023年6月にホールディングス体制に移行し、株式会社TWOSTONE&Sonsに社名変更。

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2024.11.21

「ソリッドベンチャーとしてのTWOSTONE&Sons」著者の視点

「ソリッドベンチャー」という言葉は近年、スタートアップやベンチャー企業の新たな在り方を示す概念として注目され始めました。

一般的な「スタートアップ」は膨大な外部資金を調達しながら赤字を掘り、大きなJカーブ成長を目指すモデルが多いですが、ソリッドベンチャーは、“既存事業での安定的なキャッシュを軸に着実な事業拡大を図り、無理のないペースで新規事業を積み上げていく” という特徴を持ちます。

今回取り上げるのは、エンジニアと企業をマッチングするサービスから始まり、現在では多角的にIT人材サービスを展開し、上場を果たした株式会社TWOSTONE&Sons(以下、TWOSTONE&Sons)です。

同社の成長過程を「ソリッドベンチャー」という観点で読み解くことで、外部資金を活用しつつも堅実に事業を拡大するヒントが浮かび上がります。

会社概要と創業期

会社情報

  • 会社名:株式会社TWOSTONE&Sons
  • 会社URLhttps://twostone-s.com/
  • 代表者名:河端 保志(代表取締役CEO) / 高原 克弥(代表取締役COO)

2013年に設立されたTWOSTONE&Sonsは、フリーランスエンジニア向けのマッチングサービスを主力事業としてスタートしました。

「エンジニア不足」と言われる深刻な社会課題に目を向け、多様な働き方を望むエンジニアと、優秀なエンジニアを求める企業を結びつける“プラットフォーム的なサービス”を打ち出したのです。

創業の背景

TWOSTONE&Sonsの創業者である河端保志氏と高原克弥氏は、ともにIT業界のエンジニアとしてのキャリアを積んだのち、人材業界での経験も重ねたという経歴を持ちます。

IT企業側の視点とエンジニア個人の視点、双方を理解しているからこそ、

  1. エンジニアが柔軟に働ける仕組み
  2. 企業が優秀なエンジニアにアクセスしやすい仕組み

を同時に構築できると判断し、2013年に二人で創業。日本のエンジニア不足の実態は年々深刻さを増しており、その中で彼らが手掛けたフリーランスマッチングサービスは業界の注目を浴び始めます。

ソリッドベンチャーとしての特徴

自己資金スタートと外部資金のブレンド

一般的に、ソリッドベンチャーと聞くと「外部資金をまったく調達しない」というイメージがあるかもしれません。しかしTWOSTONE&Sonsは、創業当初こそ自己資金で立ち上げたものの、後にEast Venturesなどから約1億円の資金調達を実施し、事業拡大のスピードを上げていきます。

これを「ソリッドベンチャーではない」と切り捨てるのは早計です。

むしろ、基盤となる受注モデル(フリーランスエンジニア斡旋)で安定的に売上と利益を確保していたうえで、戦略的に外部資金を活かしている点こそがソリッドベンチャー的といえます。大きな赤字を掘ることなく、段階的に投資余力を高めるアプローチです。

上場(IPO)へのプロセス

TWOSTONE&Sonsは2020年に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)に上場を果たしています。上場をゴールとするかどうかはベンチャー企業ごとに異なりますが、ソリッドベンチャーでも一定の成長余力と財務的安定が見込まれればIPOは十分狙えます。

むしろ、事業基盤が堅いほうがIPO審査でも好評価されやすい傾向があると言われます。

上場に至るまでの道のりで、外部資金をどう組み合わせるかがポイントとなります。TWOSTONE&Sonsの場合は、自己資金と1億円程度の外部投資を初期から活かし、売上の着実な増加を見せ続け、上場時に大きな赤字や資金繰りの不安がない状態を作り上げたと推察されます。

事業拡大と多角化戦略

メイン事業:フリーランスエンジニア向けプラットフォーム

創業当時から「エンジニアの新しい働き方をサポートする」というビジョンのもと、フリーランスマッチングサービスを立ち上げました。具体的には、

  • フリーランスエンジニア
  • プロジェクトベースでエンジニアを求める企業

をオンライン上で繋ぐ仕組みを提供します。この事業モデルの特長は、契約が成立するごとに仲介手数料などを得られ、在庫や設備投資リスクが少ない点です。サブスクリプションや月額管理フィーなどを組み込みやすいため、ソリッドベンチャーとしては安定収益の源泉にしやすい事業モデルといえます。

新規事業1:Tech Stars

同社のTech Starsは、エンジニアの転職を支援するサービス。フリーランスという働き方を推進する一方で、正社員登用を望むエンジニアや企業のニーズにも応えるため、転職エージェント機能を拡張。エンジニアと企業の橋渡し役をさらに広げる形です。

新規事業2:Midworks

Midworksは、フリーランスと正社員の“いいとこ取り”を目指す仕組み。フリーランスならではの高収入や自由度と、正社員のような社会保険や安定感をある程度担保する中間的な仕組みを提供。社会保障も含めてサポートすることで、従来のフリーランスが不安視していた部分を解消し、より多くのエンジニアが参入しやすい環境を作ったのです。

新規事業3:tech boost(プログラミングスクール)

エンジニア不足という社会問題を根本的に解決するには、「エンジニアを育成する場」が不可欠。そこでtech boostというプログラミングスクールを立ち上げ、新たにエンジニアになりたい人をサポートする。これにより、

  1. 自社のフリーランス/転職サービスで顧客になる人材を育てる
  2. 企業が求める人材のスキル要件に合わせてカリキュラムを柔軟に調整

という好循環が生まれると考えられます。

新規事業4:デジタルマーケティングコンサル

同社は近年、エンジニア派遣や転職だけでなく、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援やデジタルマーケティングコンサルにも領域を拡大。

これは、IT人材の確保だけでなく、実際に企業のビジネスをグロースさせるところまで伴走しようという意図がうかがえます。単なる人材サービス企業から総合DX支援企業へアップグレードする流れといえるでしょう。

成功要因とソリッドベンチャー的視点

1. IT人材不足という市場ニーズ

日本のIT人材不足は深刻で、今後も人口減少とともにより厳しくなる見込みがあります。そのため、「エンジニアとして働きたい個人」と「エンジニアが欲しい企業」とのマッチングを行う市場は、需要が底堅い。

ソリッドベンチャーの基本は「堅実に継続する収益源を確立する」ことであり、IT人材不足という追い風が大きなプラスに働きました。

2. 一貫したビジョンとサービスラインナップ

同社は「エンジニアを支援したい」という軸を全事業に通しているのが特徴です。フリーランス向け、転職向け、教育スクール、企業のDX支援――いずれもエンジニア側、企業側双方の問題解決に繋がっています。コアビジョンの一貫性は、多角化しても“事業同士のシナジー”を生みやすいのが強みです。

3. 段階的な外部資金活用

ソリッドベンチャーだからといって、まったくの無借金・無増資で事業を行う必要はありません。TWOSTONE&Sonsは創業から自己資金で立ち上げ、基盤をある程度固めた段階でEast VenturesなどのVCから資金を調達し、さらにIPOで資金調達を可能にする形でスケール。

急激に赤字を掘るのではなく、黒字・微黒字を保ちながら機動的に投資を加速させている印象です。

4. 組織課題への対応

失敗事例や課題として、急速な事業拡大に伴う組織体制・人材育成の問題が挙げられます。これは急成長する企業ではありがちな問題ですが、TWOSTONE&Sonsは外部から優秀な人材を積極的に採用し、組織改革を進めることで乗り越えたとされています。

ソリッドベンチャーといえども、急成長局面ではしっかりした組織設計が不可欠でしょう。

市場・地域展開と今後の展望

拠点拡大

東京・大阪・名古屋・福岡など主要都市に拠点を持ち、全国のエンジニア需要に応える体制を整えています。ITエンジニアの多くは都心部に集中しがちですが、地方企業にもDX人材不足の波は押し寄せており、全国的な展開が求められている状況です。

地方のエンジニアや地方企業の人材採用を支援する点でもポテンシャルは大きく、成長余地はまだまだあると考えられます。

エンジニア育成と海外進出

プログラミングスクールの「tech boost」により、初心者からでもエンジニアを目指せる仕組みを作ってきた同社。海外エンジニアのリモート活用や、日本人エンジニアを海外案件に派遣するなど、グローバル人材の活用にも踏み込めば、さらなる事業拡張が可能。

日本市場におけるIT人材不足を解消するために、海外人材の呼び込み越境リモートワークのマッチングなども視野に入ってくるかもしれません。

TWOSTONE&Sonsは、自社資金(自己資本)と外部資金調達を上手にブレンドしながら、まずはフリーランスエンジニアのマッチングという比較的安定度の高い収益モデルを確立。その後、テック領域での横展開――転職支援、教育、DXコンサル――に拡大してきました。

スタートアップにありがちな“資金ショートのリスク”は抑えつつ、IPOを通じて事業基盤をさらに強固にしています。

ここで、ソリッドベンチャー的観点からのキーポイントを再度整理します。

  1. 収益性のある中核ビジネスを先に確立
    • フリーランスエンジニアのマッチング手数料などで安定売上を確保したうえで、多角化を進める
  2. コアビジョンを軸に新規事業を展開
    • 全サービスが「エンジニアのキャリア支援」「IT人材不足の解決」という共通テーマを持ち、シナジーが高い
  3. 外部資金は必要十分な額のみ段階的に
    • 成長速度を一気に加速させたいフェーズでVC出資を受け、さらに上場でさらなる資金確保を実現
  4. 課題を克服する組織づくり
    • 急拡大に伴う組織課題を外部人材採用・組織改革で解消し、成長を持続可能に

TWOSTONE&Sonsは、このようなソリッドな成長アプローチを見せつつ、大きなトラブルや過度な赤字を出さずにIPOへとこぎつけた稀有な例として参考になるでしょう。

今後のチャレンジ

組織と企業文化の維持

IPO後は規模拡大によって、より多くの社員・拠点・事業を抱えることになります。スピード優先の環境では、経営理念や組織文化が希薄化しやすいのが常です。

ソリッドベンチャー的に“堅実経営”を続けるためにも、経営陣がどのようにビジョンやミッションを社内に浸透させ、人材育成システムを整えるかがカギとなるでしょう。

DX支援領域での競合激化

DX支援は今や数多くのコンサルティングファームやSIerも参入しており、競争が激しくなっています。自社が握っているエンジニアプールを上手く活かし、差別化されたサービスを提供できるかどうかが成否の分かれ道。

エンジニアの流動性が高い業界だからこそ、マッチングの精度やフォローアップ体制を高め続ける必要があります。

海外エンジニア需要への対応

日本国内の人材不足を補う手段として、海外エンジニアを取り込む動きが加速すると予想されます。言語や文化、ビザの問題などハードルは多いですが、ここを先んじて攻略できれば競合他社と大きく差をつける可能性があります。

逆に、海外企業からの日本向け案件開拓など、グローバル展開にもチャンスが広がるでしょう。

株式会社TWOSTONE&Sonsは、「ITエンジニア不足」という大きな社会課題を捉え、フリーランスエンジニアのマッチングサービスからスタート。その後は転職支援、プログラミングスクール、企業向けDXコンサルなど、エンジニアを取り巻くニーズに多角的に応える事業ポートフォリオを形成してきました。

創業当初は自己資金のみでスタートし、事業基盤を安定化した段階で外部資金(約1億円)を調達、さらにはIPOによる資金調達を実現するという流れは、ソリッドベンチャー的な堅実さとスタートアップ的なスピード感の両面をうまく融合した事例だと言えます。

ソリッドベンチャーとスタートアップの境界線は必ずしも明確ではありませんが、同社のように「本業の安定収益 × 必要なタイミングでの投資」を合わせ技で成長させるモデルは、多くの成長企業の参考になるでしょう。

さらに、エンジニアを主役としたビジョンは一貫しており、新規サービスを追加しても大きくブレない“軸”があるため、シナジーも強く、事業も比較的スムーズに拡張してきています。これはソリッドベンチャーが陥りがちな「広げすぎて収益化が中途半端」になるリスクを最小限に抑える秘訣ともいえます。

総じて、ソリッドベンチャーという観点から見ると、TWOSTONE&Sonsは「安定と拡大」「自己資金と外部資金の両立」「エンジニア支援という一貫したテーマ」という3点を巧みに体現している企業です。

今後、日本のIT人材不足がさらに深刻化する中で、同社がどのように人材プラットフォームを進化させ、DX支援の領域を拡張していくか――その動きから学べることは多いでしょう。