2024.11.21
「ソリッドベンチャーとしてのDirbato(ディルバート)」著者の視点
スタートアップやベンチャー企業といえば、大規模資金調達によって急速に事業を拡大するイメージが強いですが、それらのアプローチだけが成長の選択肢ではありません。
最近注目される「ソリッドベンチャー」は、外部投資に過度に頼らず、自社でしっかり利益を生み出しながら少しずつ成長のステージを上げていく企業を指します。まずは1つの収益モデルを安定させ、そこから周辺領域へ事業を拡張して着実に規模を拡大していく姿勢が特徴です。
本稿で取り上げるDirbatoは、テクノロジーコンサルティングを中心に、DX推進やシステム開発、IT関連の高度なスキルを活用したサービスを提供し、確固たる顧客基盤を構築している企業です。
創業は2018年と比較的新しいながらも、エンジニアやコンサルタントの専門性を活かして、業績を伸ばし、組織を拡大し続けています。本記事では、同社の創業期からの歩み、事業戦略、そしてソリッドベンチャーとしての成長の秘訣を掘り下げてみます。
株式会社Dirbatoの基本情報
- 会社名:株式会社Dirbato(ディルバート)
- URL:https://www.dirbato.co.jp/
- 代表者名:金山 泰英(代表取締役社長)
- 設立:2018年10月
Dirbatoは、ITコンサルティング業界の新興企業として数年で急速に存在感を高めている企業の1つです。創業期にはコンサルサービスを軸に、企業のDX推進やシステム構築を支援しながら、顧客との強固なパートナーシップを築いてきました。2023年時点でも積極的な採用を行い、社員数や事業領域を拡充しているとみられます。
創業当初の事業モデルと背景
創業期の概要とテクノロジーコンサルティング
2018年10月に設立されたDirbatoは、企業のIT戦略や新規事業開発などを支援する「テクノロジーコンサルティング」をメイン事業としてスタートしました。当初からDX推進を視野に入れた高度な課題解決をサービス化し、IT活用や業務改革に悩むクライアント企業へ専門的なアドバイスやシステム導入支援を提供するモデルです。
日本企業のDX需要が高まる一方で、IT人材の不足や既存システムのレガシー問題などの課題が表面化していた時代背景もあったため、テクノロジーコンサルティング市場は急拡大しつつありました。この状況下でDirbatoは、若い組織ならではの柔軟性とスピード感を武器に、より顧客寄りのコンサルサービスを展開し始めたわけです。
代表・金山泰英氏の経歴と起業意図
Dirbatoの創業者であり代表取締役社長の金山 泰英氏は、1981年生まれの大阪府出身です。大学卒業後、大手情報通信企業の「起業家養成コース生」として入社し、2007年に日系大手コンサルファームへ転じます。その後、同ファームのエグゼクティブセールスや営業部門の統括責任者など、経営に近いポジションでキャリアを積み、2018年に独立・創業しました。
同氏が掲げるビジョンの1つに、「世界と比較して不遇な環境にある日本のエンジニア・コンサルタントを取り巻く世界観を変え、日本再起の起点となる場を形成する」というものがあります。
これは、従来の日本企業のエンジニアやコンサルタントが、グローバル視点で見たとき十分な評価や対価を得られていない現状を問題視し、より自由で高度なプロフェッショナルキャリアを実現する場を作りたいという考え方に基づいたものです。
ソリッドベンチャーとしての成長と資金調達
1. ビジネスモデルの柱:高品質なコンサル・技術サービス
Dirbatoの収益構造は、クライアント企業向けにプロジェクト単位でのコンサル費用を得る形が中心と推測されます。ITコンサルやDX推進支援は、基本的に人件費ベースでの請求が多く、プロジェクトの規模や期間に応じて売上が積み上がるというモデルです。
この点、ソリッドベンチャーとして大事なのは、いかに安定的に多数のプロジェクトを獲得し続けるかということです。Dirbatoの場合、「企業の課題解決に真摯に取り組む」ことで顧客の信頼を得てリピーター化を図り、紹介を通じて案件を増やす戦略がうかがえます。
加えて、優秀なエンジニアやコンサルタントの育成や採用を重視することで、サービスの品質を保ちながら事業拡大しているわけです。
2. 外部資金に頼らない自己資本・利益再投資か
創業当初から具体的な大型調達の報道は見受けられません。Dirbatoは社名が大々的に出資を募ったり、VCから多額の投資を受けたという形跡が公開情報には見当たらないのが現状です。こうした状況からは、自己資本や事業によるキャッシュフローを投資原資として、地道に拡大している可能性が高いです。
ソリッドベンチャーの特徴として、大きなファイナンスのプレッシャーがないことから、短期的なイグジット(M&AやIPO)を至上命題とせず、自分たちのペースで新規事業を育てていく余地があることが挙げられます。
Dirbatoも複数のサービスを展開しながら、社員一人ひとりのスキルアップに注力する研修制度を整備しているのは、言い換えれば会社としての腰の据え方が見える点でしょう。
事業の多角化・新規事業開発
1. AI、IoT、クラウド等の先端技術ソリューション
Dirbatoが主軸とするテクノロジーコンサルティングでは、AI、IoT、クラウドなど先端技術領域が大きなテーマとなっています。これら先端技術を使った業務改革や新規事業開発を、多くの企業が模索していることから、プロジェクト需要が高い状態です。
ソリッドベンチャーとして、最先端技術にフォーカスし続けるのは、リスクとリターンが表裏一体と言えます。競合が激しい一方で、成功すれば高額なコンサルフィーを得られ、さらに長期の運用フェーズにまで参画してリカーリング収益化も期待できるでしょう。
そのため、Dirbatoがこうした最新技術の領域に積極的に取り組むのは、ビジネス拡大の大きなチャンスとして捉えている可能性があります。
2. ビジネスプロセス改善やデータ分析への展開
コンサルティング事業では、単に「技術導入」だけでなく、ビジネスプロセス改善やデータ分析といった課題にも応じたサービスを提供するとされています。これはDX推進の多くが、単なるシステム導入にとどまらず、組織改革やデータドリブンの意思決定プロセス構築などを伴うため、幅広いコンサル知見が必要になるためです。
Dirbatoのサイトや紹介を見ると、以下のような付加価値サービスを展開している可能性があります。
- 現状分析・要件定義から導入支援・運用定着までを担う「E2E(End to End)のコンサルティング」
- データ分析基盤の設計・構築支援
- 先端技術を活用した新サービス企画の伴走支援
こうした多角化アプローチは、ソリッドベンチャーの典型的な手法であり、顧客ニーズに合わせた周辺領域の深化を通じて、プロジェクト単価アップや継続受注を狙っていると言えそうです。
3. 人材育成・研修プログラム
エンジニアやコンサルタントを社内で抱え、かつその専門性を高めるために、人材育成・研修プログラムにも力を入れているとされます。ソリッドベンチャーにおいては、短期利益だけでなく長期的に人材を成長させ、専門知識とノウハウを蓄積することで、会社全体の競争力を向上させる戦略が重要です。
Dirbatoの場合、金山氏が「日本のエンジニアやコンサルタントの世界観を変える」という意図を持っている以上、企業内の人材育成が大きなテーマになっていると推測できます。
これによって離職率を下げ、熟練スタッフが長く在籍するほど、顧客へのサービス品質がさらに向上し、評判を呼んでさらに受注が増える、という好循環を狙っているのではないでしょうか。
市場・地域と競合環境
1. DX関連コンサル市場
日本企業のDX投資やIT投資が拡大する中、テクノロジーコンサル市場も急伸しています。しかしこの市場には、大手コンサルティングファーム(アクセンチュア、デロイト、PwCなど)や、国内総合系コンサル(野村総研や大手Sier系)、さらにベンチャー系コンサルなど、競合が数多く存在します。
Dirbatoの強みは、創業メンバーの大手ファーム出身者としてのノウハウと、若い組織らしい柔軟性・スピード感にあると考えられます。大手ファームのような厳密なプロジェクト管理と品質を意識しつつ、ベンチャー独自のチャレンジングな提案ができるため、特定のニッチ企業や中堅企業を中心にクライアントを獲得しやすいと推測できます。
2. 全国展開への道
本社は東京都港区にあるものの、オンラインを活かして全国の企業にサービスを提供している点は、コンサルティングビジネスとしては合理的な戦略です。
場所にとらわれず、オフィス拠点を増やすことなく案件を受注できるからです。ただし業種によっては現場ヒアリングや対面ワークショップが必須となる場合もありますが、リモートワークやオンライン会議が当たり前となった今、東京に拠点を置くメリットは大きいでしょう。
将来的には海外展開の可能性も考えられますが、日本国内企業のDX需要がまだまだ飽和していない現状では、まず国内マーケットを深堀りし、一定の実績を積んでいく姿勢が濃厚です。ソリッドベンチャーの場合、無理に海外進出せず国内で盤石な基盤を築く手法が典型的です。
失敗事例や課題とソリッドベンチャーの視点
1. プロジェクト遅延・コミュニケーション不足
コンサルティングビジネスでは、しばしばプロジェクトのスケジュール遅延や顧客との意思疎通不足などが問題になります。多くの利害関係者が絡むため、要件定義や方針決定が進まなかったり、開発フェーズで予期せぬトラブルが起こったりするリスクが高いわけです。
Dirbatoがソリッドベンチャーとして成功するためには、こうしたトラブルを如何に最小化し、迅速にリカバリーできる組織体制を持つかが重要でしょう。社内に成熟したプロジェクトマネジメント手法や、コミュニケーション強化の仕組みを整備できるかどうかが鍵となります。
2. 人材確保と定着
ITコンサルティング業界の人材争奪戦は激しく、リクルートコストがかさんだり、引き抜きや離職が起こりやすいものです。特にDirbatoのような若い会社は、大手ファームに比べるとブランド力が弱いため、優秀人材を引き留めるには企業文化や働きやすさ、キャリアアップの魅力を高める必要があります。
ただし、ソリッドベンチャー型の企業は、外資系VCからの高い給与を約束するようなモデルではなく、自社利益を原資に着実に報酬や処遇を改善していくスタイルが多いとみられます。
この点、社員と共に「強いコンサル集団を作る」「エンジニアの価値を高める」といった理念を共有できるかどうかが、長期定着のための要因となるでしょう。
3. スピード vs. クオリティ
大手に匹敵するようなクオリティを提供しつつ、ベンチャーならではのスピード感を両立させるのは容易ではありません。しかし、そこにこそ競合との差別化チャンスがあるともいえます。
ソリッドベンチャーの立場としては、大型案件を無理に取りに行くよりも、中堅クラスの企業に対して高品質なDX支援を短期で提供するなど、ポジショニングを明確にすることで安定的に伸びることが可能です。
大手ファームのように顧客もグローバル企業ばかりではないため、中堅企業がDirbatoの主要顧客として育っていく構図が理想的です。
Dirbatoが切り拓くソリッドベンチャーの姿
株式会社Dirbatoは、2018年という比較的近年の創業ながら、テクノロジーコンサルティング分野で急速に存在感を高めている企業です。その成長要因をソリッドベンチャーという視点で整理すると、以下のようなポイントが浮かび上がります。
- 創業者の強いビジョンと実務経験
- 金山氏が大手コンサル出身であり、営業部門の統括責任者として豊富な経験を積んだ。これにより、初期段階での顧客獲得と社内組織づくりがスムーズだったと推測。
- 金山氏が大手コンサル出身であり、営業部門の統括責任者として豊富な経験を積んだ。これにより、初期段階での顧客獲得と社内組織づくりがスムーズだったと推測。
- 着実なコンサルビジネスモデル
- プロジェクトベースのフィーを中心とする安定した収益構造を確立。DXブームの追い風も受け、顧客数・案件数を拡大。
- プロジェクトベースのフィーを中心とする安定した収益構造を確立。DXブームの追い風も受け、顧客数・案件数を拡大。
- 自己資本主体の拡大方針か
- 大きな外部資金調達の情報がなく、自社利益を再投資するスタイルで徐々に組織を大きくしている可能性が高い。株主やVCの短期イグジット要求に縛られないメリットがある。
- 大きな外部資金調達の情報がなく、自社利益を再投資するスタイルで徐々に組織を大きくしている可能性が高い。株主やVCの短期イグジット要求に縛られないメリットがある。
- 周辺領域への多角化
- AI・IoT・クラウドなど先端技術を用いたサービス、ビジネスプロセス改善やデータ分析にも対応し、顧客ニーズの幅を広げている。単一サービスに依存しないポートフォリオを形成。
- AI・IoT・クラウドなど先端技術を用いたサービス、ビジネスプロセス改善やデータ分析にも対応し、顧客ニーズの幅を広げている。単一サービスに依存しないポートフォリオを形成。
- 人材育成を重視した長期視点の経営
- エンジニアやコンサルタントのスキルアップを支援する研修制度やキャリアパスを充実させることで、優秀人材の確保と離職防止を図り、高品質サービスの提供を継続。
- エンジニアやコンサルタントのスキルアップを支援する研修制度やキャリアパスを充実させることで、優秀人材の確保と離職防止を図り、高品質サービスの提供を継続。
- DX推進とスピード感の融合
- 大手コンサルにはない柔軟さやベンチャー気質で、顧客の変化する要望に素早く対応。大規模案件よりも中堅企業向けに的確なソリューションを展開することで高い評価を得やすい。
- 大手コンサルにはない柔軟さやベンチャー気質で、顧客の変化する要望に素早く対応。大規模案件よりも中堅企業向けに的確なソリューションを展開することで高い評価を得やすい。
これらの要素は、まさにソリッドベンチャーが安定しながら成長を続けるうえで重要なエッセンスとなっています。短期的に大きな資金調達をするわけではなく、顧客との堅い信頼関係をベースに売上と利益を積み上げ、そこからさらなる事業領域に進出していくというアプローチです。
今後のDirbatoが乗り越えるべき課題としては、競合がますます激化するDXコンサル市場での差別化、スキル・ノウハウの保守と拡張、そして急成長のなかでの組織マネジメントが挙げられます。
また、日本企業のDX熱が今後どのように推移するかによって、市場規模に変動が起きる可能性もあるでしょう。しかし、ソリッドベンチャーならではの強みである“健全な財務体質”と“長期志向の人材育成”により、外部環境の変化にも耐性を持てると期待されます。
結論として、株式会社Dirbatoの事例は、日本のテクノロジーコンサル市場で「ソリッドベンチャー」型の成長を実践する好例であり、各種ITサービスが乱立する中でも、顧客への着実な価値提供を軸に、徐々にスケールを拡大していくビジネスモデルを体現していると言えます。
その動向を追うことで、ソリッドベンチャーの持続的な成長パターンを理解するうえで多くの示唆を得られるでしょう。