2024.11.23
「ソリッドベンチャーとしての株式会社 (イントループ)」著者の視点
本稿では、ソリッドベンチャーの定義や特徴を踏まえつつ、INTLOOPがどのようにして堅実な成長を実現してきたのか、その戦略や多角化の背景、そして課題や今後の展望に至るまで詳しく掘り下げていきます。
ソリッドベンチャーの文脈で見るINTLOOP
近年、日本国内ではベンチャー企業が多種多様な事業を展開し、スタートアップ投資やM&Aなども活発化しています。そのなかでも、とりわけ注目されるのが「ソリッドベンチャー」と呼ばれるカテゴリーです。
これは、必ずしも大規模な外部資金調達を前提とせず、自己資金や事業収益を再投資しながら、長期的視点で安定成長を目指す企業を指します。
INTLOOP株式会社(以下、INTLOOP)は、2005年2月に設立されたコンサルティングファームです。創業者の林博文氏は、大手コンサルティングファームやスタートアップベンチャーを経て起業に至った人物であり、幅広いコンサルティング経験と起業家精神を兼ね備えています。
創業当初は自己資金を基盤に事業を開始し、その後、徐々に外部資金も取り入れながら多角化を進め、現在ではコンサルティングから人材紹介、テクノロジー領域にわたる幅広いサービスを展開しています。
本記事では、INTLOOPがどのような歩みを経て成長してきたのか、そして「ソリッドベンチャー」の観点からみた際の特徴、さらには今後の課題と展望について考察します。
ソリッドベンチャーとは何か
ソリッドベンチャーの概念
ソリッドベンチャーは、ベンチャー企業のなかでも以下のような特徴を持つ企業を指すことが多いとされています。
- 自己資金や事業収益を中心に事業拡大
- 大規模なエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)やVCからの出資に依存せず、自前のキャッシュフローを活用して着実に拡大。
- 大規模なエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)やVCからの出資に依存せず、自前のキャッシュフローを活用して着実に拡大。
- 経営の独立性と長期的視点
- 投資家や株主の意向に左右されにくいため、経営理念やビジョンを堅持しながら事業を展開しやすい。
- 投資家や株主の意向に左右されにくいため、経営理念やビジョンを堅持しながら事業を展開しやすい。
- 堅実な収益構造とリスク管理
- 継続的に利益を生むビジネスモデルを基盤とし、安定した財務基盤を築いている場合が多い。
INTLOOPは、創業当初こそ自己資金でスタートし、その後、事業拡大に伴い外部資金を活用するタイミングがあったものの、コンサルティング事業を中心とした堅実な収益基盤を持ち、長期視点で事業を拡張してきた点が注目に値します。
大規模な調達ラウンドを複数回行うスタートアップとは一線を画する形で、企業としての独立性を保ちつつ多角化を実現していると考えられます。
ソリッドベンチャーのメリットとデメリット
- メリット
- 経営の柔軟性や独立性が高く、事業ポートフォリオを自社のビジョンに沿って最適化しやすい。
- 株主や投資家からの短期的なリターン要求に追われにくいため、長期的な投資や人材育成に時間をかけられる。
- デメリット
- 急速な拡大を狙う場面では、資金力が劣るため機会損失が起きる可能性。
- 新規事業への大きな投資リスクを自己で負うことになるため、失敗時のダメージが大きい。
INTLOOPの場合、2015年以降「攻めの経営」に転じ、事業拡大へと舵を切ったことで、一部外部資金の調達を行いました。
とはいえ、創業以来のコンサルティング事業によって蓄積されたノウハウと利益を活用し、リスクヘッジを図りながら多角化を進めている点はソリッドベンチャーとしての特徴を色濃く示しています。
INTLOOPの創業背景:コンサルティングと起業家精神
創業者 林博文氏の来歴
INTLOOPの代表取締役を務める林博文氏は、同志社大学法学部法律学科を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。そこでビジネスプロセス改革(BPR)やITコンサルティング、事業戦略の立案に従事した後、スタートアップ企業にも参加。
その後、再びアクセンチュアに戻り、さまざまな業界向けにプロジェクトマネジメントや戦略コンサルなどを手掛けました。
こうした大手コンサル企業とスタートアップの両方を経験するなかで、コンサルタントとしての専門知識と起業家精神 を磨き、2005年2月にINTLOOPを創業。
大手ファームの豊富な経験と、スピード感のあるベンチャー文化の両面を取り入れた企業づくりが可能になったのです。
創業当初の事業モデル
創業期のINTLOOPは、以下のような事業を中心に展開していました。
- 事業戦略コンサルティング
- 経営戦略立案や業務改革の支援を行い、顧客企業の事業課題を解決。
- 経営戦略立案や業務改革の支援を行い、顧客企業の事業課題を解決。
- ITコンサルティング・プロジェクトマネジメント
- システム導入やITガバナンスの整備など、企業のIT課題に対して助言を行い、プロジェクトの成功をサポート。
当時のコンサルティング市場は、大手ファームが主要顧客を取り合う構図が強く、中小規模の企業や新興企業への深いアプローチがまだ十分に行き届いていない状況もありました。
INTLOOPは、そのギャップを埋めるような形で、多様なクライアントに対して臨機応変なプロジェクト支援を提供し、徐々に評判を高めていきます。
成長戦略:攻めの経営と新サービス開発
4-1.2015年以降の「攻めの経営」転換
創業から10年ほどは、自己資金を中心にコンサルティング事業を安定的に拡大してきたINTLOOP。しかし、2015年以降はこれまでの蓄積を活かし、積極的な投資を伴う経営方針へとシフト しました。
これは、コンサルティング・プロジェクトの経験を通じて顧客企業の幅広い課題に触れ、「自分たち自身で新たな事業を創造し、社会課題を解決できるのではないか」という気づきがきっかけだったと考えられます。
外部資金の活用
ソリッドベンチャーとして基盤を築いたINTLOOPですが、2015年以降の多角化フェーズでは一部外部からの資金調達も行っています。2023年12月には、SDFキャピタル株式会社が運営するスタートアップ・デットファンドに参画し、デットファイナンスを活用。
これは、株式を手放さずに資金を調達できる手法であり、経営の独立性を維持しながら成長資金を確保する というソリッドベンチャーにとって理想的な形態と言えます。
多様な事業領域への参入
INTLOOPは、コンサルティング事業の枠を超え、以下のような領域へ参入しています。
- フリーランスコンサルタント活用事業
「コンサルタント人材のシェアリングエコノミー」を実現するかのごとく、フリーランスとして働くプロフェッショナルを企業とつなぐビジネスモデル。 - テクノロジー分野のソリューション開発
デジタルトランスフォーメーション(DX)支援や、先端技術を活用したソリューション導入をサポート。 - マーケティング関連WEBサービス事業
デジタルマーケティングのノウハウを活かし、企業の集客・販促を支援するサービスを提供。 - PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)事業
大規模プロジェクトのマネジメント支援に特化したサービス。 - 転職支援事業
企業の採用ニーズと人材のキャリア志向をマッチングするサービスを展開。
このように同社は、コンサル領域で培った人的ネットワークと知見を核に、新事業を次々と立ち上げています。単に「コンサルタントを派遣する」だけではなく、「自社が事業を興し、市場を作る」姿勢を持っている点が特徴でしょう。
事業多角化の詳細:コンサルティング×人材×テクノロジー
コンサルティング expertise を中心とする多角化
INTLOOPの多角化は、コンサルティングのexpertiseから派生したものです。コンサルタントとして顧客企業の経営課題に深くコミットしてきた経験があるため、
- 顧客のニーズや課題を的確に捉えられる
- プロジェクトマネジメント手法を熟知している
- 幅広い業界知識と経営視点を持っている
これらを活かし、人材紹介事業やフリーランスコンサルタント活用サービスなどを具現化しています。代表的なサービスとして挙げられる「TECH STOCK」は、企業とフリーランス人材をマッチングするプラットフォームであり、柔軟な働き方を望むプロフェッショナル人材と、人材不足に悩む企業のニーズを結びつけています。
テクノロジー分野への進出
コンサルティングファームがテクノロジー分野に参入する動きは珍しくありませんが、INTLOOPは、従来のコンサルタント派遣にとどまらず、自社でソリューション開発にも乗り出しています。
特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が広がる中、企業のIT導入・クラウド移行・AI活用などのニーズに応える形で、コンサルタントとエンジニアが協同する体制を構築している可能性が高いと推察されます。
WEBサービス・PMO・転職支援
- WEBサービス事業
デジタルマーケティングや広告運用、SNS活用など、企業がオンラインでの顧客接点を拡大するためのサービスを展開していると考えられます。 - PMO事業
大型プロジェクトの失敗リスクを抑えるため、プロジェクト管理の専任チームを組成。複数ベンダーやステークホルダーを取りまとめ、プロジェクトを円滑に進める。 - 転職支援事業
コンサルタント人材やITエンジニアなど専門性の高い人材のキャリア支援を行い、企業側には即戦力を紹介する。
いずれのサービスも「人材確保」「IT導入」「事業改革」という企業が直面する切実な課題に対するソリューションである点が共通しています。
ソリッドベンチャーとしてのINTLOOPの特色
自己資金ベースからの段階的拡大
INTLOOPは創業当初、コンサルティング事業を基盤に売上と利益を蓄え、自己資本で事業を維持してきました。その後、2015年に入ってからは複数の新規事業に投資を行う「攻めの経営」へと移行し、さらには2023年12月にスタートアップ・デットファンドへの参画も果たしています。
株式発行で一気に資金を集めるのではなく、比較的リスクの低いデットファイナンスや自己資金を使いながら成長する という手法は、ソリッドベンチャーが得意とするアプローチと言えるでしょう。
経営権を大きく手放さずに新しいプロジェクトに投資できるため、事業多角化を進めながらも企業理念や経営方針にブレが生じにくいのです。
コアコンピタンスであるコンサルティング力
INTLOOPは単なる人材派遣会社やシステム開発会社ではありません。あくまでもコンサルティングのexpertiseをコアとし、あらゆる新規事業にもその思考法やプロジェクト推進力を持ち込んでいます。
コンサルティングファームの強みである「問題解決力」「プロジェクトマネジメント力」「経営の俯瞰的視点」は、どのような事業領域にも応用可能です。
これがソリッドベンチャーとしての多角化成功を支える重要な要因となっています。
社会課題へのアプローチ
INTLOOPは公式情報のなかで、「社会課題の解決に貢献する」という理念を重視しているとされています。例えば、
- フリーランスコンサルタント活用
→ 高度人材の働き方の多様化を促進し、人手不足に悩む企業を支援。 - 転職支援事業
→ キャリアアップを目指す人々と採用難の企業をマッチングし、労働市場の流動化に貢献。 - テクノロジー開発・DX支援
→ 生産性向上や業務効率化を通じ、企業や社会の持続的発展をサポート。
このように、自社の成長だけでなく社会にとっての意義を意識することで、長期的に見ても事業が支持されやすい環境をつくっているのです。
今後の展望:ソリッドベンチャーとしての成長可能性
業界におけるポジショニング
INTLOOPは、大手ファームから中小規模企業まで幅広くコンサルティングを提供し、人材サービスやDX支援へも展開しています。
このポジショニングは、さまざまな業界・業種のクライアントを獲得できる強みとなる一方で、競合となりうるのは外資系大手コンサルや日系総合コンサル、さらにはITサービス企業や人材大手など多岐にわたります。
総合的な競争力を維持するうえでは、専門性の強化やイノベーション創出が欠かせません。
スタートアップ・デットファンド参画の意義
2023年12月のスタートアップ・デットファンドへの参画は、INTLOOPにさらなる資金的余力をもたらすと同時に、経営権を大きく希薄化させない 手段であることが大きなポイントです。
ソリッドベンチャーとしての独立性を保ちながら成長を加速させる最適な選択肢とも言えます。今後は、獲得した資金を活用し、新規事業の立ち上げや既存事業の深化を一層進めることが期待されます。
社会課題へのさらなる取り組み
働き方改革やデジタル人材不足、地方創生など、社会には依然多くの課題があります。INTLOOPは、コンサルファームとしてのノウハウを活かしながら、さらに多様なステークホルダー(行政、教育機関、NPOなど)との連携を広げる余地があるでしょう。
社会課題の解決に取り組むことで、長期的かつ安定的な成長と社会的評価を同時に得ることが可能となります。
INTLOOPが示すソリッドベンチャーの姿
INTLOOPは、2005年の創業以来、コンサルティング事業を軸に堅実な基盤を築き、2015年以降「攻めの経営」へと転換することで多角化を加速させてきました。フリーランスコンサルタントを活用するサービスやテクノロジーソリューションの開発、WEBマーケティング、PMO、転職支援など、社会課題に即した幅広い事業を手掛けています。
こうした成長ストーリーは、ソリッドベンチャーの典型的な成功パターンを体現しています。つまり、
- 自己資金・事業収益をベースに安定した経営を確立
- 必要に応じて外部資金(デットファイナンスなど)を活用し、経営権を過度に希薄化させない
- コンサルティングのコア能力(問題解決力・PM力・ビジネス視点)を多角化へ活用
- 社会課題を的確に捉え、顧客ニーズに応じた新規事業を創出
一方で、コンサルティングやIT業界は技術革新や競合の台頭が激しく、プロジェクトごとの成果や人材育成など、多くの課題にも直面することが予想されます。
INTLOOPがこれらの課題をどう乗り越え、さらに多角化を進めていくかが今後の焦点となるでしょう。
しかし、「自らが事業創造を行うコンサルティングファーム」という独自のポジションを明確にしている同社は、現場の問題解決だけでなく、新たな付加価値を生む事業を次々に立ち上げる可能性を秘めています。
社会やクライアント企業が求める変革に真摯に向き合い、多種多様な人材とアセットを結集させることで、ソリッドベンチャーとしての持続的な発展を実現していくことでしょう。
INTLOOP という事例は、自己資本主導の着実な経営を基盤にしつつ、いざ攻めに転じるタイミングでは適切な外部資金も取り入れる——そのバランス感覚を武器に、複数の事業を成功させている好例です。
今後も同社がどのような新規事業を手掛け、コンサルティング業界と社会課題解決にどのようなインパクトを与えていくのか、引き続き注目が集まるといえるでしょう。