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グローバル展開を目指すソリッドベンチャーの戦略
公開日:2024.11.19
更新日:2025.3.26
筆者:エンジェルラウンド株式会社 大越匠

高いリスクを取って一気に海外へ攻めるスタートアップが注目されがちな時代。しかし、国内で堅実に収益を積み上げ、その実績を武器に段階的に海外進出を進める“ソリッドベンチャー”が、結果的に長期的な優位性を築く事例が増えています。本記事では、ソリッドベンチャー特有の「安定基盤×ジワ新規」アプローチを軸に、海外展開で成功を収めるための具体的な戦略を事例とともに解説します。
ハイライト
- 国内での安定収益を土台に、海外リスクをコントロール
- 現地文化への段階的適応「ジワ新規」で無理なく拡大
- ローカルパートナーとの協業と組織内の海外人材育成が鍵
国内でのキャッシュカウが支える「無理のない海外挑戦」
安定収益モデルが生む“海外投資の余裕”
多くのハイグロース型スタートアップは海外市場を“短期的成長”のブースターと捉え、大規模投資で参入することが少なくありません。しかし、それが成功するかどうかは未知数で、失敗すれば経営を大きく揺るがしかねません。
一方、ソリッドベンチャーは国内での受託開発、人材事業、SaaSなど、初期から堅実に利益を出せるビジネスを確立することで安定収益を確保。
- ネオキャリア社はまず国内人材市場で大きなシェアを獲得し、その強固な経営基盤をもとに、アジア諸国への展開を進めています。
- レバレジーズ社も国内でSESや看護・介護の人材紹介を柱に収益を確立し、それを足がかりにグローバル展開を図っています。
こうした安定基盤があるため、大きなリスクを伴う海外市場でも“腰を据えたチャレンジ”が可能になります。
一足飛びの拡大よりもジワ新規で着実に
国内事業から得られるキャッシュがあるソリッドベンチャーは、海外展開の際も「いきなり全力投球」せずに済みます。小規模でテストマーケティングを行い、現地で得た顧客の声や市場情報を踏まえて徐々に改良しながら拡大することで、初期投資を抑えつつリスク管理を徹底できるのです。
文化の壁とビジネス慣習の違いを“ジワ新規”で乗り越える
ローカライズの巧拙が海外成否を左右する
海外では言語や商慣習、規制が異なるのはもちろん、潜在顧客のニーズも国内とは大きく異なります。ソリッドベンチャーが得意とする「ジワ新規」アプローチは、こうした現地要素の逐次学習に向いています。
- 価格設定を複数パターンでテスト
- カスタマーサポートやUIを現地文化に寄せる
- 現地競合企業との比較検証を継続して行う
大掛かりに参入して失敗してしまえば大損害ですが、最初は小さく試せば失敗コストは限定的です。そこで得られた学びを生かしてサービスをアップデートし、少しずつ大きくする。この慎重さがソリッドベンチャーならではの強みとなります。
パートナーシップ活用で大幅なコストダウン
海外市場の情報収集や規制への対応は、自社だけでは莫大なコストと時間がかかります。そこで、現地企業との協業が鍵になります。
- 共同出資やジョイントベンチャーで市場アクセスを共有
- 現地の販売チャネルや顧客基盤を借りることで、初期顧客獲得をスムーズに
ネオキャリア社などは東南アジアでの合弁や提携を活用し、最低限のリスクでスタートしつつ、徐々にノウハウを蓄積していった事例が注目されています。
人材戦略と組織文化が海外成功を後押しする
社内のグローバル人材育成と“現地力”の両立
海外展開を担うのは、言語能力に加えて異文化理解力やローカルビジネス感覚を持った人材です。
- 国内基盤がしっかりしているソリッドベンチャーであれば、育成期間を確保しやすい
- 海外赴任のトライアルを繰り返し、人材を適材適所に配属できる
結果として、無理なスケジュールで「現地対応がままならないまま事業を急拡大」するリスクを抑えられます。海外に拠点を置いてからも“本社との連携”や“現場での意思決定”がスムーズになるのは、この人材戦略が機能しているからこそです。
長期視点の経営カルチャーが海外対応力を高める
海外は規制や為替、政情など、多くの不確実性をはらんでいます。ソリッドベンチャーが持ち合わせている“長期的な視座”と“安定経営のカルチャー”は、こうした不確実性への柔軟対応を可能にします。
- 大きなリスクが見えれば拡大を一時停止し、様子を見る
- 政治的変動や経済変動が起こった際も“急ブレーキ”にならず冷静に対処
投資家や株主から「急成長の要請」をされにくい、あるいは自己資本比率が高い会社ほど、このペースコントロールがスムーズに行えます。
事例に見るソリッドベンチャー海外進出の実態
ネオキャリア社:強固な国内営業力をアジアへ横展開
国内人材紹介で圧倒的な営業力を培ったネオキャリア社は、そのノウハウをアジア各国に適用。現地の労働市場に合わせて採用手法や契約形態を細かく調整し、ステップを踏んだ“ジワ新規”を実践しています。シンガポールやベトナムなど、拠点ごとに段階的に業務フローをローカライズし、結果的にリスクを最小化しながら拡大に成功しています。
レバレジーズ社:国内でのエンジニア×医療人材ノウハウをグローバルへ
国内でITエンジニアや看護・介護向け人材ビジネスを拡大してきたレバレジーズ社。これらの“人材マッチング”ノウハウを海外に導入する際も、一気に全世界へは進出せず、アジア主要都市から順次テストを行う方針を採っています。国内事業が生む安定収益を活かし、ローカル人材の採用や現地ネットワーク構築に投資。こうした慎重なアプローチが、海外拠点の定着率を高めています。
ソリッドベンチャー流の海外拡大を成功させるポイント
- 国内での安定収益を確保し、海外投資の緩衝材とする
- 先に国内でキャッシュカウを作り、海外の不確実性をカバーする余裕を得る
- 先に国内でキャッシュカウを作り、海外の不確実性をカバーする余裕を得る
- 現地適応を優先し、ローカルパートナーと組む
- 言語や規制、商慣習をすべて自前で学ぶより、現地企業の知見を活用
- 言語や規制、商慣習をすべて自前で学ぶより、現地企業の知見を活用
- リスクを段階的にコントロールする“ジワ新規”戦略
- まず限定市場・セグメントで試験投入→調整→拡大のフェーズを踏む
- まず限定市場・セグメントで試験投入→調整→拡大のフェーズを踏む
- 海外要員育成と企業カルチャー醸成
- 社員が海外で活動しやすいよう育成リソースを確保し、長期視点の経営を組織に浸透させる
- 社員が海外で活動しやすいよう育成リソースを確保し、長期視点の経営を組織に浸透させる
- 不測の事態に備えた柔軟なペースコントロール
- 政治・経済変動には素早く対応し、必要なら拡大を一時停止する決断力も大切
長期的なグローバル勝者となるために
ソリッドベンチャーの海外展開は、急進的に拡大を目指す企業と比べると、どうしても“地味”に映るかもしれません。しかし、国内で培った収益基盤とノウハウを活用し、ローカライズやパートナーシップを軸に堅実に成長することで、結果的に長期安定と持続的優位性を確保しやすくなるのです。
ネオキャリア社やレバレジーズ社のように、国内で盤石のキャッシュカウを築き上げ、その売上を元手に海外展開を“ジワジワと”押し進めた企業こそが、海外市場においても確固たる地歩を築いています。
世界進出はゴールではなく、その国で存続・発展していくプロセス。安定経営だからこそ可能な長期戦略こそが、多くのソリッドベンチャーを国際舞台で成功へと導くのです。