5分でざっくりスタートアップとソリッドベンチャーの違いを考えてみた

2024.11.15

筆者:エンジェルラウンド株式会社 大越匠

ハイライト

  • スタートアップは急成長を目指し、ソリッドベンチャーは安定成長を重視
  • スタートアップは高リスク高リターン、ソリッドベンチャーは低リスクで持続的成長を狙う
  • 経験や資金状況に応じたモデルの選択が成功への鍵となる

スタートアップとソリッドベンチャーの定義

スタートアップとソリッドベンチャーは、それぞれ異なる目的と成長アプローチを持った企業形態です。

スタートアップ

スタートアップは新たな技術や独創的なアイデアを武器に、短期間での急成長を目指す企業を指します。そのため、多くのスタートアップは初期から積極的に外部からの資金調達を行い、市場シェアの迅速な獲得を目指します。この成長の形は「Jカーブ型成長」とも呼ばれ、最初は赤字が続くが、成功すれば一気に高い収益が見込めるのが特徴です。

ソリッドベンチャー

一方、ソリッドベンチャーは、安定した収益基盤を築きながら着実に成長することを目的としています。このモデルは、いきなり急成長を目指すのではなく、まず既存の市場ニーズに応える形で安定的な収益を生み出し、その後徐々に事業を拡大していくスタイルです。この緩やかな成長を通じて、企業のリスクを抑え、長期的な持続可能性を確保することが目指されます。

例えば、ナイル社はSEOコンサルティングから始め、収益基盤を築き上げた後に「おトクにマイカー 定額カルモくん」などの新規事業に挑戦しました。このように、既存事業の成功を足がかりにしながら徐々に新たな挑戦を行うのがソリッドベンチャーの特徴です。

リスクと成長戦略の比較

スタートアップとソリッドベンチャーは、リスクの取り方や成長戦略においても大きく異なります。

スタートアップのリスクと成長

スタートアップは、多くの場合、リスクの高い挑戦を前提としています。新しい技術やアイデアを市場に導入するために、多額の資金が必要となることが多く、外部のベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達が欠かせません。このため、事業が軌道に乗るまでの間は赤字経営が続くことが一般的です。また、市場がその製品やサービスを受け入れるかどうかが成功を左右するため、ビジネスの成功には大きな不確実性が伴います。

例えば、スタートアップであるDeepMind Technologies社は、最初はAI開発に多額の資金を投入し、市場での成功を待つリスクを負いました。その結果、AI技術が注目されるようになった後、大きな成功を収めました。

ソリッドベンチャーのリスクと成長

一方、ソリッドベンチャーは、初期段階から収益を確保することで事業の安定を図り、緩やかな成長を目指します。これにより、急激な成長に伴うリスクを最小限に抑え、持続的なビジネスの展開を可能にします。特に既存市場のニーズに応える形で始まることが多く、すぐに収益化できるため、長期的な経営の安定性が高まります。

例えば、レイスグループ社は人材サービスを基盤に安定したキャッシュフローを確保しながら、徐々に新しいサービスや子会社を追加して成長してきました。このように、収益基盤を固めながらリスクを抑えた事業拡大が、ソリッドベンチャーの特徴です。

どちらを選ぶべきか?状況別の選択基準

スタートアップとソリッドベンチャーのどちらが適しているかは、起業家の経験、資金状況、そしてビジネスに対するビジョンによって大きく変わります。

スタートアップを選ぶ場合

スタートアップは、リスクを恐れずに急成長を目指す野心的な起業家に向いています。特に、技術革新やアイデアが市場に大きなインパクトを与えられると考える場合は、スタートアップモデルが有効です。このモデルでは、投資家からの資金を活用して短期間でシェアを拡大し、競争優位性を確立することが重視されます。

ソリッドベンチャーを選ぶ場合

一方で、ソリッドベンチャーは、リスクをできるだけ抑え、安定した成長を望む起業家に適しています。特に、初めての起業で収益基盤をしっかり築きたい場合や、家庭や生活の安定を重視する場合には、ソリッドベンチャーモデルが現実的です。このモデルでは、収益性の高いビジネスから始め、事業を少しずつ拡大していくアプローチが取られます。

例えば、ギークス社は、まずフリーランスエンジニアのマッチングサービスから始め、その後に動画事業やIT関連の新規事業に挑戦しました。初期から安定的な収益を確保しつつ、ジワジワと事業を拡大することで、長期的に持続可能な成長を実現しています。

また、レバレジーズ社は、SES(システムエンジニアリングサービス)を基盤に、その後医療・介護、若手キャリア支援などへ次々と事業を拡大しました。この企業は、リスクを恐れず新たな事業分野にチャレンジし続けたことで、売上1000億円を超える企業へと成長しています。

自分に合った道を選ぶために

スタートアップとソリッドベンチャーは、成長戦略やリスクの取り方、目的において異なるアプローチを持っています。

スタートアップは急成長と高リスクを受け入れ、ビジョンに基づいて短期間での市場シェア拡大を狙います。一方、ソリッドベンチャーは安定した収益と持続的な成長を目指し、経済的な安定性を確保しながら段階的な成長を目指します。どちらの道を選ぶかは、起業家自身のビジョン、経験、資金状況、リスク許容度に依存します。

最終的に重要なのは、自分の目指すビジョンや生活スタイルに適した選択を行うことです。急成長を狙いたいならスタートアップ、安定した経営を目指したいならソリッドベンチャーと、それぞれの強みを生かした選択をすることで、より成功の可能性が高まります。