株式会社エンジョイワークス

事業内容

ホームページ制作、システム開発、アプリ制作

代表取締役

金子 伸一

SNS

2025.01.20

「ソリッドベンチャーとしてのエンジョイワークス」著者の視点

近年、「ソリッドベンチャー」という言葉が注目を集めつつあります。

これは、大規模なVC資金に頼り短期的な急成長を目指すスタートアップとは異なり、地に足のついたビジネスモデルで継続的な収益を確保しながら、必要に応じて外部資金を活用することで段階的に事業を拡大していく企業を指す概念です。

赤字を大量に掘るわけでもなく、極端にリスキーな賭けもしない一方で、新規事業や多角化に意欲的な姿勢を持ち、「安定と挑戦」を両立させるケースが多いのが特徴です。

本記事では、そんなソリッドベンチャーの一例として株式会社エンジョイワークス(以下「エンジョイワークス」)を取り上げます。

2008年の創業期はホームページ制作という受託的なサービスからスタートし、顧客の声をもとにサービスラインを広げ、今やシステム開発やアプリ制作などワンストップのITサービスを提供するに至った同社は、着実に経営基盤を固めながらもチャレンジを怠らない姿勢を示しています。

その成功の秘訣を探るべく、創業期の状況から現在の事業多角化戦略、さらに抱える課題や失敗事例などを分析します。

会社概要と創業当初

会社情報

  • 会社名:株式会社エンジョイワークス
  • URLhttps://enjoyworks.co.jp/
  • 代表者名:金子 伸一(代表取締役)
  • 設立:2008年

本社は東京都新宿区に位置し、設立以来、主に中小企業や個人事業主に向けたWebサイト制作やシステム開発、アプリ制作といったITサービスを提供してきました。今では全国規模で顧客を抱え、さらには海外市場への進出も視野に入れるなど、積極的な拡大路線を歩んでいます。

創業当初の事業モデル:ホームページ制作

エンジョイワークスが創業期に注力したのはホームページ制作でした。2008年といえば、企業が続々とWebサイトを立ち上げ始めた時期であり、とくに中小企業や個人事業主向けのWeb制作需要が高まっていました。

代表の金子伸一氏は、大学卒業後、ITベンチャーでシステムエンジニアとして勤務し、フリーランスとしてもWeb制作経験を積んでいたため、受託Web制作事業で早期に安定的な収益を確保することができたわけです。

当時、ITベンチャーといえば華やかな投資やスケールを志す企業が注目されていましたが、エンジョイワークスはまず「確実に受注を取れるホームページ制作」でキャッシュを積み上げるという堅実なスタートを選択。これこそソリッドベンチャーらしいアプローチといえます。

創業者のバックグラウンド:SE経験とフリーランス

代表の金子氏は、学生時代からプログラミングに興味を持ち、大学卒業後はITベンチャーのシステムエンジニアとして活躍。その後フリーランスとして独立し、多種多様なWeb案件やシステム開発プロジェクトをこなす中で、顧客ニーズを正確に捉え、結果を出せば長期的な信頼関係に繋がることを肌感覚で知ったと言います。

「お客様のビジネスを成功に導く」という理念のもと、ソフトウェア開発やWeb制作はあくまで手段であり、顧客の事業成果を最終的に上げることがエンジョイワークスのミッションだ、という考え方を創業以来貫いています。これが後の「ワンストップITサービス」展開に結びつくキーとなります。

ソリッドベンチャーとしての成長戦略

1. 安定事業で実績と収益を確保

まずはホームページ制作を基盤として、安定的なキャッシュと実績を積み重ねるところから始めたエンジョイワークス。高度な技術力が求められるコアシステム開発やアプリ開発にいきなり手を出すよりも、Web制作で顧客との信頼を築く方がリスクが低く、ビジネスを学ぶステップとしても合理的といえるでしょう。

こうしたモデルは一見地味ですが、赤字を膨らませることなく確実に利益を確保しつつ、次のチャレンジを準備できるのが大きな強みです。

2. 顧客ニーズに応じたシステム開発・アプリ制作へ拡大

Web制作の現場で顧客から「もっと販売管理を連動させたい」「業務をシステム化したい」といった声を受け、自然な流れでシステム開発アプリ制作に参入しました。これはまさに「顧客ニーズをキャッチして新規事業につなげる」というソリッドベンチャーの好例と言えます。

受注型のシステム開発やアプリ制作は、ホームページ制作に比べて単価が高く、より専門的な技術やマネジメント能力が必要ですが、その分、成功すれば収益規模は大きくなります。

エンジョイワークスはここで「ウェブ・システム・アプリのワンストップ提供」を武器に、中小企業から大手まで幅広い顧客を獲得できる体制を整えました。

3. ワンストップITサービスの強み

エンジョイワークスの特徴は、顧客のニーズに応じてホームページ制作からシステム開発、アプリ制作、ECサイト構築、Webマーケティング支援、クラウドサービス導入支援などを一気通貫で提供できることです。

「複数のベンダーに発注しなければならない」「どこかの工程だけに抜けや漏れがある」という状況を解消し、プロジェクトをスムーズに進めたい顧客にとって、ワンストップは大きな魅力となります。ITリテラシーの低い中小企業や個人事業主ほど、相談窓口が1つであれば意思決定がしやすくなるのです。

こうしたビジネスモデルは、大手にはないきめ細やかさと柔軟性を強みに、安定したリピート受注や長期契約につながります。そして新たなニーズが生まれれば、さらに新規サービスを開発する余地が生まれる好循環です。

4. 自己資金+外部資金での拡大

エンジョイワークスは創業期は自己資金で事業を進めていましたが、事業拡大に伴って外部資金の調達も行い、財務基盤を強化してきたとのこと。ソリッドベンチャーは、足元での黒字を確保しつつ必要な時にだけ外部資金を活用するため、ベンチャーキャピタルや金融機関との交渉も比較的有利になりがちです。

結果として、無理のない範囲で人材採用や設備投資ができ、高い成長率と安定性のバランスを取れるのが強み。エンジョイワークスの場合、地味な受託モデルをきちんと収益化しながら着実に拡大することで、外部資金による過剰なリスクを避けられています。

事業多角化の実際

(1) ECサイト構築やWebマーケ支援

ホームページ制作から一歩進んで、ECサイト構築Webマーケティング支援にも乗り出しています。コロナ禍を通じてEC需要が急増し、多くの企業がオンライン販売を開始・拡大する中で、ECサイト構築や運用支援は大きな需要を生んでいます。

エンジョイワークスは既に持っているデザイン力やシステム開発力、そして顧客のWeb集客ニーズを活かし、EC構築のコンサルや保守・運営を含めたトータルサービスを提供。また、Web広告やSEO施策などマーケティング領域に踏み込むことで、顧客との契約が一過性で終わらず、継続的な運用支援を請け負うかたちにできるのが強みです。

ここで毎月のコンサルフィーや運用費が発生するモデルになれば、企業としてもストック型ビジネスを増やすことが可能になります。

(2) クラウドサービス導入支援

近年、多くの企業がSaaS(クラウドサービス)を導入し、営業管理・会計・人事管理などを効率化する動きが加速しています。エンジョイワークスは、こうしたSaaS導入を支援するサービスも展開中。

顧客からすれば、どのSaaSが適切かのコンサルだけでなく、実際のデータ移行や社員教育、システム連携などを一手にやってもらえるのは魅力です。

エンジョイワークスにとっては、システム開発でのアプリケーション連携ノウハウやホームページ制作でのUI/UX設計力が活かせる領域で、自然な多角化といえます。

(3) システム・アプリ制作の先端技術への取り組み

IoTやAI、ビッグデータ解析など、新技術がビジネスに組み込まれる動きがますます広がっています。エンジョイワークスは、受託開発で培ったエンジニアリング力をアップデートしつつ、顧客企業がこうした先端技術を活用したサービスを立ち上げる際にも対応可能なチームを整備している模様。

これにより、時代の変化に合わせたアップセル・クロスセルを実現でき、顧客との長期的パートナーシップを強化する狙いがあるでしょう。

市場・地域戦略

市場:中小企業向けITサービス

エンジョイワークスは特に中小企業向けのWeb制作、システム開発、SaaS導入支援に強みを持っています。大手SIerが取らないような中小案件も積極的に請け負い、そこを高い満足度でカバーすることでファンを増やす戦略は、ニッチではあるものの安定性が高いビジネスモデルです。

日本国内には膨大な数の中小企業があり、DX推進が遅れているところも少なくありません。ここに良心的な価格と実績で突っ込むことで、堅調な成長を続けられます。

地域:全国対応+海外展開も視野

本社は東京都新宿区ですが、オンラインで完結する案件が多いため、全国各地の顧客をカバー可能。また、英語力や海外ネットワークを活かして海外市場への進出も視野に入れているとされます。Webやシステム関連のサービスは国境を越えやすいので、今後はアジア圏などへの展開も十分考えられるでしょう。

失敗事例や課題

ソリッドベンチャーとはいえ、エンジョイワークスもいくつかの失敗や課題に直面してきました。

  1. 新技術への対応遅れ
    IT業界は技術進化が非常に速いため、適切なタイミングで勉強会や研修を行わなかった結果、後発スタートとなり競合に先を越されるリスクがある。
  2. 新規事業の撤退判断の難しさ
    Web制作から派生して始めた新プロダクトやサービスが採算に合わず撤退を余儀なくされたケースもあるようです。失敗を糧にしてリスク評価や事業計画策定スキルを磨いてきました。
  3. 組織拡大に伴うマネジメントの問題
    少人数から始まった企業は、規模拡大で管理職の不足や社内コミュニケーションの混乱を招きがち。エンジョイワークスでは継続的に組織体制を見直し、人材育成や業務フローの標準化を進めるなどして乗り越えようとしているようです。

こうした失敗や課題は、事業拡大を図るソリッドベンチャーによくある問題ですが、エンジョイワークスは「失敗を学びとして次へ活かす」企業文化を持つことで、着実に乗り越えてきています。

エンジョイワークスが示すソリッドベンチャーの道

エンジョイワークスは、創業当初からホームページ制作という比較的ローリスクな受託モデルで堅実に収益を上げ、そこからシステム開発・アプリ制作・EC構築・Webマーケ・クラウド導入支援といった領域へ緩やかに進出することで事業多角化を実現しています。要所では外部資金を取り入れつつ、過度なリスクを負わないペースで成長を遂げてきました。

ソリッドベンチャーの要諦を同社の例から振り返ると、以下の通りです。

  1. まずは顧客ニーズにマッチした堅実なビジネスモデルでキャッシュを確保
    • ホームページ制作の受託という地道なモデルだが、安定した受注が得られ、次の投資資金を生み出す原動力に。
  2. 顧客の要望をきっかけに自然な形で多角化
    • システム開発やアプリ制作、ECサイト構築など、顧客との対話を通じて派生的に新規事業を立ち上げ、無駄なリスクを回避。
  3. 自己資金+外部資金をバランスよく活用
    • 初期は自己資金で地道にスタートし、拡大フェーズで外部から資本注入。過剰な調達による経営の不安定化を避けつつ、必要なリソースは確保。
  4. ワンストップITサービスによる差別化と安定リピート
    • ホームページ制作からクラウド導入支援までを一気通貫で提供できるので、リピート率が高く継続案件を獲得しやすい。結果として組織を安定的に拡大できる。
  5. 失敗や課題を通じて柔軟に改善を繰り返す企業文化
    • IT業界の変化スピードに対応するため、新規事業での試行錯誤を許容し、撤退や路線変更を積極的に行いながらノウハウを蓄積。

結果として、エンジョイワークスは社員数と売上を少しずつ増やしながら新たなビジネスチャンスを探索し、安定成長を築き上げています。

規模こそメガベンチャーに及ばなくても、中小企業や個人事業主のDX化ニーズが高まる現代において、このワンストップITサービス路線には依然として大きな成長余地があり、海外展開も期待がかかります。

ソリッドベンチャーとしてのエンジョイワークスのケースは、地道な受託からスタートしつつも顧客ニーズと技術力を掛け合わせた多角化戦略でリスクを分散し、外部資金調達も適切なタイミングで行うことで、確実性と挑戦の両立を果たす一つの理想形を示しています。

派手な調達や急スケールとは異なる道ですが、結果的に安定した黒字経営を継続しつつチャレンジを続けられるため、多くの中小・中堅ITベンチャーが学ぶに値する成功モデルといえるでしょう。