株式会社ジオコード

事業内容

Webマーケティング事業、クラウドセールステック事業

代表取締役

原口 大輔

1976年生まれ、千葉県野田市出身。通信、IT業界を経て、2005年にジオコードを設立。

SNS

2024.12.25

「ソリッドベンチャーとしての株式会社ジオコード」著者の視点

株式会社ジオコード(Geo Code)は、創業当初から自己資金による堅実な経営を継続し、上場を果たすに至るまでの経緯や事業戦略、多角化のポイントなどを詳しく掘り下げることで、ジオコードの独自性と強みを浮き彫りにしていきます。

ソリッドベンチャーとは

日本のベンチャー企業の中には、外部の大規模な資金調達に頼らず、自己資金と事業利益の再投資を軸に大きく成長を遂げる「ソリッドベンチャー」と呼ばれる企業群があります。

彼らは一気に巨額のキャピタルを調達するのではなく、収益を着実に積み重ねることで堅実な財務基盤を築き、長期的な視点で事業拡大を図っていくという特徴を持ちます。

本記事では、2005年に創業し、SEO対策やWeb広告代理業務を中心に事業を展開してきた株式会社ジオコード(Geo Code)を、そのようなソリッドベンチャーの一例として取り上げます。

ジオコードは、外部からのエクイティファイナンスを行わずに独立性を維持しながら成長を続け、2020年11月26日にはJASDAQスタンダード市場(現・東京証券取引所スタンダード市場)に上場を果たしました。

創業期からの歩みや事業モデル、成長戦略、多角化のプロセス、そしてソリッドベンチャーとしての強みと今後の展望について分析していきます。

創業と背景

創業期の事業モデル

株式会社ジオコードは、2005年に創業し、当初はSEO対策やWeb広告の代理業務を主力事業としてスタートしました。SEO(検索エンジン最適化)は、当時インターネットの普及とともに企業のWebサイト集客が課題となり始めた時期に注目度の高いサービスでした。

さらに、リスティング広告やディスプレイ広告などの運用サポートまでワンストップで手がけることで、顧客企業のWebマーケティング全般を請け負う体制を整えていた点が大きな特徴です。

こうしたWebマーケティングの包括支援を実施する企業は当時から少なくはなかったものの、「SEO対策をはじめとした検索エンジン関連のノウハウ」と、「広告クリエイティブやサイトデザインまで含めた運用実務力」を兼ね備えた会社はまだまだ限られていました。

ジオコードは、最適化施策のプランニングから制作・デザイン、そして効果測定や改善まで一括してサポートする体制を築き上げることで、差別化を図っていたといえます。

創業者のバックグラウンド

代表取締役社長の原口大輔氏は1976年生まれの千葉県出身。通信業界やIT業界での経験を経て、Webマーケティングの成長余地と重要性に着目し、2005年にジオコードを設立しました。

通信・IT関連で培った営業力と技術的知見をあわせ持つことが、同社の創業期における大きな武器になったと推測されます。

また、外部投資家の意向に左右されずに自由なサービス展開を行うため、自己資金で起業を選んだ点も特徴的です。こうした選択が後にジオコードをソリッドベンチャーとして成長させていく基盤になりました。

ソリッドベンチャーとしての成長要因

外部資金調達に頼らない堅実経営

ジオコードは、創業当初から外部資金調達(エクイティファイナンス)を行わず、自己資金での事業拡大を続けてきました。

VCや金融機関から大規模な出資を受けることで急拡大を図るベンチャーとは異なり、自社が得た利益を再投資することで、着実に規模を拡大するビジネスモデルを取っています。

こうした姿勢は、以下のようなメリットをもたらします。

  1. 経営の独立性確保
    • 株主からの短期的なリターン要求に左右されない
    • 経営者の意思決定を柔軟かつ迅速に行える
  2. 長期視点のサービス投資が可能
    • 収益性がすぐに見込めない新規事業でも腰を据えて育成
    • 顧客企業のニーズに丁寧に応える姿勢を持続しやすい
  3. リスク管理の徹底
    • 大規模な赤字経営に突入しにくく、財務基盤を堅持
    • 積み上げ型のビジネスなので過度な負債を抱えづらい

ソリッドベンチャーは、派手な事業投資や広告宣伝費をかけるイメージよりも、確実な顧客獲得とサービス品質の改善を繰り返し、時間をかけて成長していく特徴があります。

ジオコードもまさにそのスタイルを体現しており、対外的な資本介入が少ない分、「独自のビジョンをしっかり持ち、顧客や社員の満足度向上を丁寧に追求できる」という強みを発揮してきたと考えられます。

Webマーケティングでの実績蓄積

創業期からのSEO・Web広告代理事業で培ったノウハウは大きな資産となりました。中小企業から大企業まで、多様なクライアントのWeb集客施策をサポートする中で、検索エンジンのアルゴリズム変化や広告トレンドへの対応力を強化していったのです。

さらに、Webサイト制作やデザイン面も含めたコンサルティング型アプローチを行うことで、クライアント企業との長期的な信頼関係を築きやすくなりました。

  • SEO関連技術の深耕
  • 広告運用・クリエイティブ支援
  • アクセス解析や改善提案

こうしたワンストップ支援で積み上げた実績が、後の多角化(クラウドセールステックへの進出)を進める際にも生きています。

クラウドセールステックへの進出と上場

事業の多角化:クラウドセールステック分野

ジオコードはWebマーケティング領域で収益基盤を確立した後、クラウドセールステック事業に本格的に参入しました。

これは、営業活動やバックオフィス業務をクラウドサービスで効率化するソリューションを提供する事業領域です。代表的な製品としては以下が挙げられます。

  • 「ネクストICカード」
    企業の勤怠管理や交通費・経費精算を一元管理するツール。ICカードのタッチで打刻できるため、手入力の手間やミスを減らし、人事・経理部門の負担を軽減。
  • 「ネクストSFA」
    営業支援システム(SFA: Sales Force Automation)であり、営業プロセスの可視化、進捗管理、自動レポートなどを実装。担当者やマネージャーが客観的データに基づいて営業戦略を立案しやすくなる。

もともとWebマーケティングで築いた顧客基盤と、「ITで業務効率を高める」というニーズとの相性は非常に良く、既存取引先に対してクラウドツールを提案できる環境があったと推測されます。

また、同社の理念である「社会の模範となる唯一無二の魅力的な会社を創る」に基づき、「企業活動全体をデジタル化し、業務効率を高めるサービスを提供したい」という方向性が明確に打ち出され、Web集客の先にある「企業運営の革新」まで踏み込んだ事業展開が可能になったのです。

JASDAQスタンダード市場への上場

自己資金による独立経営を続けてきたジオコードですが、2020年11月26日にJASDAQスタンダード市場(現・東京証券取引所スタンダード市場)へ上場を果たしました。

外部資金を大々的に入れない方針を維持しつつも、株式公開することで調達手段や社会的信用を高め、新たな段階の成長を目指すステップに踏み切ったといえます。

  • 上場による社会的信頼度の向上
  • 自社株を活用した人材獲得やM&Aの選択肢拡大
  • 既存株主への株式流動性の提供

これらのメリットは、今後のさらなる多角化や、クラウドサービスの拡販に拍車をかける要因になるでしょう。

事業多角化の成功要因

Webマーケティングとのシナジー創出

ジオコードのビジネス構造を俯瞰すると、Webマーケティング(SEO・広告)事業と、クラウドセールステック事業が両輪の関係を築いています。

たとえば、Webマーケティングのクライアント企業が、より深い業務効率化や営業プロセスのデジタル化を望めば、クラウドツールを提案できるチャンスが生まれます。逆に、クラウドセールステックのユーザー企業に対しては、Web集客やプロモーションのノウハウを提供できるのです。

このように、1社で両方のリソースを完備しているからこそ、顧客企業の課題を幅広く解決するワンストップサービスが可能になります。

結果、LTV(顧客生涯価値)の向上やリピート契約の促進が期待でき、売上の安定化にもつながるわけです。

プロダクト開発力と顧客ニーズへの対応力

クラウドサービスの分野は競合が激しく、特にSFAツールや経費精算ツールなどは国内外問わず多くの提供企業が存在します。その中でジオコードの「ネクストICカード」「ネクストSFA」が支持を得ている背景には、シンプルで使いやすいUI/UXと、導入支援を含めた運用サポートの充実が挙げられます。

Webマーケティングで培ったきめ細かなコンサルティング力が、クラウドサービスにも応用されているのです。

顧客企業のITリテラシーや導入規模、既存システムとの連携など、現場で発生する課題は多岐にわたります。そこに対して柔軟に対応していく姿勢が、ジオコードがSaaSの競争市場で一定のシェアを確保できる理由と考えられます。

株式会社ジオコードは、外部資本に依存せず自己資金で成長を続け、着実に事業の幅を広げてきたソリッドベンチャーの好例といえます。

SEO対策やWeb広告代理事業によって得た安定収益クライアント基盤を強みとし、クラウドセールステックへと進出して「ネクストICカード」「ネクストSFA」などのサービスを開発・提供。

さらに2020年11月にはJASDAQスタンダード市場へ上場を果たし、社会的な信用力を背景に新たなステージへと進んでいます。

その成長を支える要因としては、以下の点が特筆されます。

  1. 自己資金拡大の方針
    • VC出資などに頼らず独立性を確保し、長期的にサービスや組織を磨き上げてきた。
  2. Webマーケティングの実績構築
    • SEOや広告運用で培ったノウハウと顧客基盤が、次の事業領域への足掛かりとなった。
  3. クラウドサービスへの早期シフト
    • 営業支援(SFA)、勤怠・経費管理などの社内業務効率化に着目し、自社独自のツールを開発・拡販。
  4. ワンストップとシナジー効果
    • マーケティング領域とセールステック領域を組み合わせ、クライアントの包括的な課題解決を実現。

今後は、国内外の競合企業がますます増加し、クラウドサービスの進化も加速していくことが予想されます。その中で、ジオコードがソリッドベンチャーとしての独自色を保ちつつどのように差別化を図るのかが注目されます。

上場を機に得た信用力と資金調達の選択肢を活かし、持続的なイノベーションを追求しながら、「社会の模範となる唯一無二の魅力的な会社」を実現していくことが期待されるでしょう。

外部からの資金に縛られない自由度の高さや、顧客との強い結びつきを糧に進化を遂げてきたジオコードの道のりは、今後の日本のベンチャー・スタートアップにとっても示唆に富んだロールモデルとなり得ます。

着実な収益モデルの構築と長期的な事業ビジョンが、多くのステークホルダーを巻き込みながら社会的価値を高めていく原動力となるかもしれない