2024.11.23
「ソリッドベンチャーとしてのナハト」著者の視点
ナハトはインフルエンサーマーケティング市場を皮切りに、多角的な事業展開を続けています。その過程では、外部資金に依存せずに自社資金(自己資金)をベースとしながら急成長を遂げており、まさにソリッドベンチャーとしての特徴を示す好例といえます。
本記事では、同社の創業期のストーリーから成長戦略、事業多角化、課題と展望に至るまでを詳しく掘り下げ、最終的にソリッドベンチャーとしてどのように評価されるべきか考察していきます。
ソリッドベンチャーとは
ソリッドベンチャーの定義
スタートアップやベンチャー企業というと、大規模な資金調達を行い、急激な事業拡大を目指すイメージが強いかもしれません。
たしかに、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資や銀行借り入れなどを通じて外部資金を積極的に導入し、短期間で急成長を試みる企業が多いのも事実です。
しかし一方で、大きなリスクを一気に負うのではなく、自社で得た利益をもとに事業を拡張しながら、堅実に成長していく企業も存在します。
こうした企業は、必要に応じた外部資金調達を行う場合はあっても、基本的には自己資金による経営を貫き、経営の独立性と長期的視点を重視するのが特徴です。これを指して「ソリッドベンチャー」と呼ぶことがあります。
- 安定的かつ継続的な収益の確保
- 外部資金への過度な依存を避け、投資家の意向に左右されにくい経営
- 長期的ビジョンを重視し、必要に応じて段階的にリスクを取る
ナハトは、創業当初から自己資金で事業を拡大し、外部からのエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)を行わずに成長を実現してきました。この点が、ソリッドベンチャーとしての姿を端的に示しています。
ナハトがもたらすソリッドベンチャーの示唆
多くのスタートアップが「迅速なスケール」を志向する中で、ナハトは自己資金を主体としながらも短期間で事業領域を拡大し、複数の事業を同時並行で立ち上げています。
その背景には創業者のインフルエンサーマーケティングへの知見や、SNS運用ノウハウへの強い自信、そしてそれをベースにした確かな収益源を築き上げたことがあるでしょう。
ここにソリッドベンチャーならではの「堅実さとスピード感の両立」が垣間見えます。
創業期のストーリー:インフルエンサーマーケティングへの着目
創業者のバックグラウンドと起業動機
ナハトの代表取締役社長である安達 友基氏は、1993年生まれの若手起業家です。東京・世田谷区出身で、中央大学法学部在学中にはNY留学も経験。学生時代からインフルエンサー事業を開始し、SNSを活用したマーケティングの可能性をいち早くキャッチアップしました。
法学部に在籍しつつも、ニューヨークというグローバル環境で実践的なビジネスセンスを培ったことが大きな特徴です。アメリカのSNS活用事例を間近で観察し、日本でもインフルエンサーを基点としたマーケティングが今後大きく伸びると確信したと推測されます。
創業当初の事業モデル
2018年にナハトを設立した当初、中心となる事業はインフルエンサーマーケティングでした。具体的には、
- 企業とインフルエンサーのマッチング
- SNS上でのPR・広告配信に関するコンサルティング
- インフルエンサーを活用したキャンペーン企画の立案・運用
などを手がけ、企業のSNS戦略を総合的にサポートするビジネスモデルです。
当時、InstagramやYouTube、TwitterなどのSNSプラットフォームはすでに多くのユーザーを抱えており、企業側も新たな広告手法としてインフルエンサーを活用したいというニーズが高まっていました。
一方で、インフルエンサー側もマネタイズやブランディングの面で課題を抱えていたため、両者を効率的に仲介する事業者が求められていたのです。
ナハトは、創業者の学生時代からのアクティブな活動を通じて得たインフルエンサーとのネットワークと、SNSプラットフォームの特性を熟知したマーケティングノウハウを武器に、創業まもなくから一定の収益を確保することに成功したと考えられます。
事業拡大と資金調達戦略
外部資金に頼らない成長
ナハトの特徴として特筆すべきは、創業当初から外部資金を調達せずに自己資金で事業を拡大してきた点です。
昨今ではVCやエンジェル投資家からの資金注入を受けるベンチャーが増えている中で、独自に事業収益を再投資する形で急成長を遂げているのは、非常に興味深いケースといえます。
- 利点1:経営方針の独立性
出資者がいないため、経営方針や事業ドメインの選択が創業者の裁量に委ねられ、長期的な視点で意思決定ができる。 - 利点2:失敗リスクの段階的コントロール
大規模資金を一気に投じるスタイルではないため、事業ごとの実績を見ながら投資バランスを調整し、失敗に備えたリスクヘッジを行いやすい。 - 課題:投資スピードと競合優位
一方で、資金が十分に確保できないと、大手企業や外部資金を潤沢に持つスタートアップとの競争で不利になる可能性もある。
ナハトはこうしたメリット・デメリットを踏まえながら、堅実に自己資金の範囲で拡大を図り、その過程でインフルエンサーマーケティング以外の新たなビジネス領域にも積極的に乗り出しています。
売上と利益を再投資する成長モデル
インフルエンサーマーケティング事業は、顧客企業からの広告費やコンサルティングフィーが入りやすいビジネスです。
成功報酬型やプロジェクト型の案件を複数抱えることで、一定のキャッシュフローを確保しやすく、売上利益をもとに社内で新規プロジェクトを立ち上げることができる点が同社の強みと推測されます。
「より大きな資金で拡大路線を採る」よりも、「事業ドメインを広げながら収益バランスを取り、安定的に拡大を続ける」という戦略が、ナハトのソリッドベンチャーらしさを象徴していると言えます。
多角化戦略:インフルエンサーから広告代理、プロダクション、D2Cまで
本業から派生した新規事業
ナハトはインフルエンサーマーケティングのノウハウを土台に、以下のように事業を拡大してきました。
- 広告代理事業
インフルエンサー広告だけでなく、リスティング広告、ADネットワーク、SEOなど、オンライン広告全般に対応。顧客企業のマーケティング施策を総合的にサポートするビジネスへと進化。 - 広告コンサルタント事業
SNSキャンペーンの設計や運用、キャスティング、動画制作、LTV改善など、より深いコンサルティング要素を含めたサービスを展開。 - プロダクション事業
自社でインフルエンサーを抱え、タレント事務所のような形でマネジメントや育成、キャスティングを行う。 - Webメディア制作事業
自らメディアを持つことで、情報発信力と収益源を多重化。特定のジャンルに特化したメディアやSNSアカウントを育成し、広告収入やPR案件を獲得。 - D2C事業
インフルエンサーの影響力を活用し、自社ブランドを立ち上げ、直接消費者に販売。美容・健康食品やアパレルなどが代表的領域であり、インフルエンサーマーケティングと高い親和性を持つ。
成功要因:コアとなるマーケティング expertise
これら多角化を可能にした根底には、「マーケティング」をコアコンピタンスとする社内文化があると考えられます。
SNS上でユーザーの興味・関心をどう喚起するかを深く理解し、インフルエンサーと企業をスムーズにマッチングする仕組みづくりを得意としているため、新しい事業領域に参入する際も、既存事業での実績・ノウハウを活かしやすいのです。
- インフルエンサーの選定やキャスティング
- SNSキャンペーン設計と運営
- コンテンツ作成におけるクリエイティブノウハウ
- Webマーケティング全般(SEO、リスティング、広告運用など)の知見
こうしたノウハウをベースに、広告代理から自社ブランド立ち上げまでシームレスに展開できるのが強みであり、結果として急成長を実現しているといえます。
「コミュニティ」の重視がもたらすシナジー
さらに同社は、「楽しく誇れるコミュニティ」というミッションを掲げています。単にビジネスの拡大だけを追うのではなく、社内外の人材がワクワクしながら働ける環境づくりを重視している点が注目に値します。
インフルエンサーをはじめ、SNSで活躍するクリエイターやブランドと協業する際には「人と人の結びつき」や「共通の価値観の共有」が重要です。
このコミュニティ志向が、SNSビジネスの特性と絶妙にマッチし、ナハトのイノベーション創出を後押ししていると推測されます。社内外の多様な才能が集まりやすい環境を整え、そのアイデアやコンテンツをいくつも事業に転用できるのです。
市場と地域
ターゲット市場
ナハトが主に戦うのは以下の市場です。
- インフルエンサーマーケティング市場
InstagramやYouTube、TikTokといった主要SNSを活用した広告・PR市場。 - オンライン広告市場
リスティング広告、ディスプレイ広告、アフィリエイトなどWebを介した広告全般。 - Webメディア市場
ネットニュースサイトやキュレーションメディアなど、コンテンツ運用による収益獲得。 - D2C市場
ECを活用し、ブランドが消費者に直接商品やサービスを提供するモデル。
これらの市場はいずれも成長余地があり、新興プレイヤーが活躍できる領域として注目度が高まっています。特にSNSに強みを持つ企業は若年層ユーザーを取り込みやすく、大手広告代理店ではカバーしきれないニッチな部分をうまく攻略できます。
地域展開
本社は東京都渋谷区にあり、SNSを介して全国の顧客企業やインフルエンサーを対象にビジネスを展開しています。
オンライン主体のため、特定の地域に限らず全国規模でサービスを提供できるのが強みです。将来的には海外のインフルエンサーやブランドとも連携する可能性も考えられます。
さらなる多角化とコミュニティ志向
SNSの進化とインフルエンサーマーケティングの拡張
今後もSNSは新たなプラットフォームや機能を生み出し続けると考えられます。ナハトは、既に確立したインフルエンサーマーケティングのノウハウをアップデートしながら、メタバースやライブコマースといった新潮流とも連携する可能性があるでしょう。
インフルエンサー自身が「コミュニティの中心」となり、その周辺でのブランドコラボやD2Cを展開するスキームは、今後ますます拡張していくとみられます。
海外展開の可能性
インフルエンサーマーケティングは国境を越えやすい特性を持っています。英語圏やアジア圏のSNSインフルエンサーを活用した海外進出を支援するなど、新たな市場を開拓する道も考えられます。
ナハトが実績を積み、自社資金にゆとりが出てくれば、海外オフィスを設置してグローバル規模のSNSマーケティング代理店として進化するシナリオも十分あり得るでしょう。
「コミュニティ」を軸としたイノベーション
ナハトのミッションである「楽しく誇れるコミュニティ」というキーワードは、社会全体が価値観の多様化を進めるなかで大きな意義を持ちます。
単なる広告運用やプロダクト販売にとどまらず、人と人がつながり、何かを共創する場を作り上げることが、これからのSNS活用のカギとも言えます。
コミュニティに根ざしたサービスやプラットフォームを展開し、より多くのユーザーや企業を巻き込むことができれば、ナハトの事業規模は一段と拡大するでしょう。
ナハトに見るソリッドベンチャーの姿
以上の分析を踏まえ、株式会社ナハトは以下の特徴を持つ「ソリッドベンチャー事例」と言えます。
- 自己資金での成長
創業当初から外部資金(エクイティファイナンス)を行わず、自社収益を再投資しながら短期間で複数の事業を立ち上げた。 - インフルエンサーマーケティングを基盤にした多角化
SNS運用ノウハウとマーケティング expertise を武器に、広告代理、コンサル、プロダクション、Webメディア、D2Cなど多彩な領域へ広げる。 - コミュニティ重視の企業文化
「楽しく誇れるコミュニティ」というビジョンを掲げ、社員やインフルエンサー、顧客がワクワクできる事業を創出。 - 堅実さとスピード感の両立
ベンチャーらしいスピードで事業を拡大しつつも、自己資金をベースとするためリスクをコントロールしやすい構造。 - 人材育成と事業運営の高度化が今後のカギ
急成長に合わせた人材確保と、社内外のリソースを有機的に結び付ける組織体制が長期的な成長に不可欠。
これらの要素を踏まえると、ナハトはソリッドベンチャーとしての典型的なパターンを体現していると言えます。
すなわち、1)初期の実績で安定したキャッシュフローを確保し、2)自己資金を再投資しながら新規事業を段階的に開発し、3)経営の独立性を保持するというプロセスです。
今後は競争が激化するインフルエンサーマーケティング市場や広告市場において、いかに「コミュニティを核としたイノベーション」を継続できるかが試されるでしょう。特に人材育成と組織拡充の課題にどのように対応するかが、ナハトの成長を左右する大きなファクターになっていくと考えられます。
とはいえ、SNSを基点としたマーケティングの需要は今後も拡大が見込まれ、D2Cへの取り組みも多くの可能性を秘めています。
ナハトが保持している「起業家マインド」「マーケティング expertise」「コミュニティ志向」がしっかりと発揮されれば、さらなる事業拡大と新市場開拓を実現できる可能性は十分にあるでしょう。
ナハト × ソリッドベンチャーのポイント整理
- 自己資金での着実な成長:VC依存ではなく、自社ビジネスから得た利益を再投資。
- 着実な事業基盤の確立:インフルエンサーマーケティングで安定収益を確保。
- 多角化とイノベーション:広告代理、プロダクション、D2C等を併営し、複数収益源を確保。
- コミュニティの強み:人材やインフルエンサーを中心に多彩な才能を集め、新規事業やブランドを創出。
- 課題:人材確保・組織体制の強化、さらなる社会変化・競合増加への対応。
ナハトの事例は、創業が比較的浅い企業であっても自己資金を軸にスピード感を持って事業を伸ばせることを示しています。
インフルエンサーやSNSといった新時代のツールを使いこなせる能力と、代表者の行動力・コミュニティ重視の姿勢が噛み合い、ソリッドベンチャーとしての成功を引き寄せています。
これからも、多様化し続けるインターネット業界において、新しいモデルを提示する存在として目が離せない企業の一つといえるでしょう。