ナイル株式会社

事業内容

ホリゾンタルDX事業、自動車産業DX事業

代表取締役社長

高橋 飛翔

1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中の2007年、ナイル株式会社を設立。多様な産業のデジタル化をテーマに、インターネットを活用して顧客企業のビジネスを支援するホリゾンタルDX事業を展開する。様々な事業を支援する過程で自動車産業に変革の余地を見出し、2018年より自動車産業DX事業を開始。「幸せを、後世に。」をミッションに、巨大産業のアップデートに取り組む。

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2024.11.21

「ソリッドベンチャーとしてのナイル株式会社 (Nyle Inc.)」著者の視点

ナイル株式会社は、2007年に創業され、Webマーケティング支援からスタートして、現在では多様な企業のデジタル変革(DX)を支援するホリゾンタルDX事業、自動車産業DX事業など、幅広いサービスを展開しています。

創業者である高橋飛翔氏が大学在学中に起業し、デジタル領域におけるノウハウを土台に着実な事業拡大を遂げた点は、いわゆる「ソリッドベンチャー」的な要素と捉えることができます。

ソリッドベンチャーとは、創業期から大規模な投資ラウンドに依存することなく、自社サービス・自社収益を軸に堅実かつ持続的な拡大を進める企業を指す概念のひとつです。

ナイルは創業初期から自己資金ベースで事業を始め、後にVCなどから調達を行いつつも、着実に利益を再投資しながら新規事業を打ち出してきたように見受けられます。

本稿では、ナイルの創業期の事業モデル成長戦略事業多角化の過程、そして「ソリッドベンチャー事例」の文脈における重要なポイントを考察します。

ナイル株式会社の基本情報

  • 会社名:ナイル株式会社 (Nyle Inc.)
  • URLhttps://nyle.co.jp/
  • 代表者名:高橋 飛翔(代表取締役社長)
  • 創業:2007年
  • 本社所在地:東京都品川区

高橋飛翔氏は1985年生まれ。東京大学法学部在学中の2007年にナイルを設立し、若くして起業家としての道を選びました。学生起業という点では、大規模な資金調達には頼りづらい環境下で、自身のビジネスアイデアや営業・技術力を駆使して事業を推進せざるを得ない状況だったことが想定されます。

これはソリッドベンチャーらしい「スモールスタート」という点で象徴的と言えるでしょう。

創業当初の事業モデル:Webマーケティング支援

Webマーケティング支援の軸

ナイルの最初の核となるビジネスは、インターネットを活用したWebマーケティング支援でした。2000年代中頃からは、国内でもECやWeb集客が急速に普及し始め、多くの企業がSEOやリスティング広告への関心を高めていました。

しかし、専門的なノウハウをもつ人材はまだ十分に出回っていなかったこともあり、こうした領域に参入するベンチャー企業は限られていました。

ナイルはこの市場ニーズを捉え、SEO対策、リスティング広告運用、Webサイト制作などをワンストップで提供。多種多様な業界の顧客企業と取り引きを重ねながら、売上や営業利益を積み上げていったのです。

Webマーケティング支援は、初期コストが高額なわけではなく、専門知識があれば比較的スモールスタートが可能という特長があります。

ソリッドベンチャーとして、自己資金ベースで始めやすかったのも、この領域に挑んだ大きな要因の一つと考えられます。

創業者の背景:大学在学中の起業

高橋氏は大学在学中から起業を実現。新卒就職を経ずにビジネスを展開したという点は、若手起業家がVCからの投資や事業会社とのアライアンスを得やすい時代背景があったとも考えられます。

しかし、ソリッドベンチャー視点では自己資金や少額のエンジェル投資で起業し、利益の再投資で成長していくモデルが主流です。

ナイルの場合、上場時期や大規模ラウンドなどが明示されていないことから、序盤は自己資金+事業利益によってWebマーケティング支援を確立し、十分な実績と利益を蓄積しながら成長してきた可能性が高いと言えるでしょう。

成長戦略と資金調達

1. Webマーケティング支援事業での実績蓄積

Webマーケティング支援事業で一定の実績がつくと、顧客企業も自然と増え、それらクライアントの業態・業種も多様化します。これにより、ナイルは複数の業界に通じるデジタル技術ノウハウを得ることになりました。

具体的には、広告運用やサイト制作だけでなく、クライアント企業のビジネス課題や市場ニーズを深く理解することで、コンサルティング要素も身に付けていったと推測されます。

こうした知見の蓄積は後述する「ホリゾンタルDX事業」や「自動車産業DX事業」への展開に繋がります。すなわち、Webマーケティング支援はナイルの一大キャッシュ・カウとなり、同時にコンサルティング視点も養う起点になったわけです。

2. ベンチャーキャピタルからの資金調達

同社は事業拡大に伴いベンチャーキャピタルからの資金調達を実施しました。これはソリッドベンチャーであっても、成長の段階でさらなる飛躍のために外部資金を取り入れるケースは少なくありません。

重要なのは、その資金が創業初期から潤沢に入ってくるのではなく、ある程度事業実績が固まったタイミングで投資を受け、事業ポートフォリオの展開やR&D、M&Aなどに活用するという点です。

この方法であれば、VCサイドの要求に過度に振り回されず、創業者の意志やコアバリューを保ちやすいです。ナイルがソリッドベンチャー的なアプローチを貫いているのであれば、出資比率や投資家の影響力をコントロールしつつ、事業資金として有効活用しているはずです。

事業の多角化や新規事業の開発

1. ホリゾンタルDX事業

Webマーケティング支援の基盤を活かして、ナイルはホリゾンタルDX事業を開始。AI、IoT、クラウドといった先端技術を活用し、クライアントのDXを支援するサービスを提供するに至りました。

WebマーケティングからDXへ展開することは、既存顧客に対するアップセル/クロスセルが期待できるため、多角化の一環として非常に合理的です。

ホリゾンタルDXというキーワードは、個別業種別のソリューションというより、複数の業種で共通する課題(顧客管理、在庫管理、マーケティングオートメーションなど)を横断的に解決するモデルを指していると考えられます。

ナイルが蓄積したデジタル技術とコンサルノウハウは、多業種・多業態で汎用性があるため、ここでの拡張は自然な流れです。

2. 自動車産業DX事業

2018年からは、自動車産業のDXにも進出。月額定額制のカーリースサービス「おトクにマイカー 定額カルモくん」などを開発・運営しています。自動車業界は既存の流通・販売モデルが複雑かつ保守的だった面もあり、スマホアプリやオンラインマーケットプレイスによる新たな価値提供は非常に魅力的な市場といえます。

ナイルはWebマーケティングやホリゾンタルDXのノウハウを活かし、ユーザー体験を重視したサービスを設計することで、業界のデジタルシフトを後押ししているのです。

この戦略的なジャンプは、ソリッドベンチャーとしての特徴——本業で得た資金やノウハウを新規分野に再投資して成長する——を象徴しています。

3. 事業多角化を支えるコアコンピタンス

ナイルのコアコンピタンスは、一言で表すならば「デジタル技術を駆使した顧客価値創造のノウハウ」です。SEOやリスティングの技術は時代とともに変化しますが、顧客のビジネスを深く理解し、デジタル手法で成長を支援するというスキルセットは不変です。

これがホリゾンタルDXや自動車産業DXなど、業種別ソリューションへと横展開できる基盤となっています。

特筆すべきは、プラットフォーム型サービスの開発に乗り出した点です。「定額カルモくん」は、自社プラットフォームとしてのビジネスモデルを確立する挑戦であり、受託型ビジネスを超える高収益モデルへシフトできる可能性があります。

ソリッドベンチャーの場合、安定した利益を出す本業がある中で、こうした自社プロダクト開発に挑む余力が生まれるため、まさに堅実な多角化の事例といえます。

ソリッドベンチャー視点で見るナイルの特徴

1. 創業期:自己資金ベースでスモールスタート

高橋氏が大学在学中に立ち上げたという点から、大きな投資が得られる前にWebマーケティング支援という低リスクモデルで立ち上げた可能性が高いです。

ここで営業利益を積み上げ、組織を拡大しつつ、徐々に新規サービスへ着手していくパターンはソリッドベンチャーらしいアプローチです。

2. 事業拡大時のVC調達

事業を広げる過程で、VCからの増資を受けた点に、ナイルの成長意欲が見てとれます。ソリッドベンチャーであっても、まったく外部資金を入れないわけではなく、適切なタイミングでの増資により、「ホリゾンタルDX」「自動車産業DX」のような大きめの新規事業へ積極的に投下できたのではないかと推察されます。

ここでのポイントは、VCに過度にコントロールされず、自社ビジョンを維持できる出資比率や、タイミングを選んだ可能性が高いことです。

3. 新規事業でのプラットフォーム型モデルへの進化

自社プロダクトやプラットフォームを持つことは、長期的な収益力と差別化をもたらします。「定額カルモくん」はまさにそれで、同社が単なるコンサル・支援会社から自社サービスを回す事業会社に進化している姿が見られます。

ソリッドベンチャーとして、外部圧力の少ない環境下で独自サービスを成長させられるのは大きな強みです。

4. 継続的な学習・改善と組織拡大

IT業界は急速に変化するため、ナイルは常に最新技術をキャッチアップしながら顧客企業のDXを支援しています。ソリッドベンチャーは社内外のステークホルダーとの関係を重視し、着実にノウハウを溜めながらリスクを分散して拡大します。

ナイルが複数の事業軸を持ちながら、各領域で成功事例を積み上げている点は、この学習と改善プロセスを地道に進めてきた証左です。

市場・地域

ナイルは東京都品川区に本社を置き、日本全国の企業を対象にサービスを提供しています。近年では自動車産業向けDXを軸に、国内ユーザーに向けたプラットフォームサービスを展開しているため、さらに全国的な知名度が上昇しつつある状況でしょう。

ホリゾンタルDX事業では多様な業種の企業に対応可能で、今後、地域を問わずビジネスのIT化を進めたい企業がターゲットになります。

競合としては、大手コンサルティング企業、SaaSベンダー、システムインテグレーター、さらには自動車メーカー系のIT子会社などが挙げられるでしょう。

とはいえ、ナイルはWebマーケティング支援で築いた顧客基盤自社サービスのプラットフォーム運営という二つの軸を併せ持つ点で差別化していると考えられます。

ナイルが示すソリッドベンチャー像

総じて、ナイル株式会社は「Webマーケティング支援」という堅実な収益基盤を起点に、ホリゾンタルDX事業や自動車産業DX事業へと多角化を進め、自社サービスのプラットフォーム開発に挑戦しつつ成長してきた企業です。

創業当初は自己資金でスモールスタートし、後に必要に応じてベンチャーキャピタルの出資を得る形で拡大を図っています。

ソリッドベンチャー的な観点で注目すべきは、

  1. 外部投資に一足飛びで頼らず、本業収益を活用して拡大
  2. 顧客企業のニーズに寄り添った段階的・周辺領域への進出
  3. 自社サービス(プラットフォーム)を持つ挑戦で高付加価値化
  4. 失敗を学習に変え、組織のノウハウ向上に繋げる

といった点が挙げられます。これらはソリッドベンチャーが長期的に存続し、安定成長するための鍵であり、ナイルはこのモデルを体現してきた成功事例といえます。

今後も、IT・DXを取り巻く市場競争はさらに激化するでしょう。その中で、ナイルがいかにしてエンジニアリング・コンサル・プロダクト開発といった多面的な力を統合し、ユーザー体験を革新する新たなプラットフォームやサービスを世に出せるかが勝負所となります。

ソリッドベンチャーの利点である柔軟な資本構成とオーナーシップを最大限活かしながら、多角的に拡張しつつリスクをコントロールするナイルの今後の展開に注目が集まるところです。

このように、ナイルは創業期のWebマーケ支援から始まり、安定収益とノウハウを武器に横展開してきたソリッドベンチャーの好例と言えます。社会・技術環境の変化に素早く対応しながら顧客企業の課題解決に取り組むその姿は、他の新興ベンチャーにとっても学ぶべき点が多いでしょう。