2024.11.25
「ソリッドベンチャーとしての株式会社one net」著者の視点
株式会社one net(以下、one net)は、2016年の創業以来、自己資金をもとにSES(システムエンジニアリングサービス)事業を中心に事業を拡大してきた企業です。
外部からの大規模な資金調達を実施せずに成長してきた「ソリッドベンチャー」としての特徴をどのように発揮しているのか、また、どのような戦略や取り組みによって事業を多角化しているのかを探っていきます。
ソリッドベンチャーとは何か
まず、「ソリッドベンチャー」という用語を整理しましょう。一般的にベンチャー企業は、短期間での急成長を狙うために多額の外部投資(エクイティファイナンス)を受け、積極的なリスクテイクを行うケースが多く見られます。
一方、ソリッドベンチャーは、自己資金や事業収益を基盤に着実に成長を目指し、経営の独立性を維持するベンチャー企業を指すことが多いです。ソリッドベンチャーとしての特徴には、以下のような要素が挙げられます。
- 外部資金に依存しない財務体制
事業のキャッシュフローや自己資金を活用し、投資家からの大型出資に頼らない。 - 経営意思決定の独立性
株主構成や投資家との利害調整が少なく、経営者の長期ビジョンを優先しやすい。 - リスク管理の透明性
大きな借入や株式の希薄化がないため、リスクを可視化しやすく、堅実な財務戦略を組み立てられる。 - 持続的な組織文化の育成
派手なグロースではなく、社員の育成や顧客価値の追求を重視する企業文化が根付く。
ソリッドベンチャーだからこそ、マーケット環境や経済情勢の変動が起きても、経営方針を柔軟にコントロールしやすいという利点があります。
one netはまさにそうした独立性を保ちながら、着実かつ柔軟に事業を拡大してきた例と言えるでしょう。
one netの創業背景
会社情報
- 会社名:株式会社one net
- URL:https://one-net.jp/
- 代表者名:星 祐貴(代表取締役社長)
- 創業年:2016年
創業当初の事業モデル
one netは2016年に設立され、創業当初からSES事業に注力していました。SES(システムエンジニアリングサービス)事業とは、ITエンジニアを企業へ派遣し、顧客企業のプロジェクトやシステム開発を支援するビジネスモデルです。
自社でサービスやパッケージを抱えるのではなく、エンジニアの技術力やコミュニケーションスキルを活かして顧客に寄り添う形で価値を提供する点が特徴と言えます。
創業者のバックグラウンド
代表取締役社長の星祐貴氏は、2012年に情報通信会社へ入社し、業界内でのノウハウを蓄積してきました。その後、「自分ならばもっと柔軟かつ顧客密着型のサービスを展開できるのではないか」という思いから起業を決意。
すでにIT業界でのコネクションや知識を活かし、SES事業を起点とするone netを立ち上げました。
このように、勤務経験を通じて業界知識と人脈を獲得した上で起業するのは、IT業界での起業パターンとしては比較的オーソドックスです。
しかし、外部資金に頼らず自己資金で立ち上げ、さらにそこから多角化を図る企業は、それほど多くないと考えられます。
SES事業からの着実な成長
SES事業の特性と成長の要因
SES事業は、クライアント(顧客企業)に常駐するエンジニアの人件費に上乗せする形で利益を得るモデルが主流です。顧客企業は、自社内でエンジニアを採用・育成するコストやリスクを削減でき、一方でone netなどのSES企業は、エンジニアの派遣先を増やすことで売上を拡大できます。
この事業で大切なのは、以下のポイントです。
- エンジニアの育成とマネジメント
派遣したエンジニアが能力を発揮し、顧客から高い評価を得られるかどうかがリピートや追加案件に直結する。 - 案件獲得力
多様な業界や企業とのネットワークを築き、新規案件を確保し続ける。マーケットの変化に合わせて柔軟に対応できる営業力が鍵となる。 - 安定したキャッシュフロー
SES事業は月ごとの人件費がベースで売上が積み上がる構造が多く、堅実なキャッシュフローを生みやすい。投資家からの出資に頼らずに拡大が可能なビジネスモデルとも言える。
one netは、こうしたSES事業の特性を活かして安定収益を得る仕組みを確立していったことが、ソリッドベンチャーとしての体制を強化するうえでも大いに役立ったと考えられます。
自己資金を活かした事業拡大
外部資金調達を行わず、自己資金で事業を拡大する企業にとっては、まず最初に事業を軌道に乗せることが最優先です。SES事業の収益基盤を安定させることで、one netはキャッシュフローを確保。その資金を活かして、新規事業や人材採用に再投資するという循環を生み出しました。
多額の投資を受けた企業のように派手な拡大は難しいかもしれませんが、その代わりに経営判断を自由に行える点がメリットとなっています。リスクコントロールを適切に行いながら、堅実かつ計画的に人材や設備へ投資することで、安定成長を可能にしているのです。
アライアンス事業とインサイドセールス事業への多角化
アライアンス事業
one netは、SES事業で培ったIT expertiseと、人材・顧客ネットワークを活かし、アライアンス事業を展開しています。アライアンス事業では、他企業との提携を通じて以下のような新たな価値を生み出していると考えられます。
- ソリューションの共同開発
ITサービスやコンサルティングサービスなどを持つパートナーと提携し、顧客に対してワンストップでソリューションを提供する。 - 顧客基盤の共有
お互いの顧客を紹介し合い、相互にビジネスチャンスを拡大する。顧客の課題解決領域を広げることで付加価値を高める。 - 専門人材の共有
必要に応じて相手企業のエンジニアやコンサルタントをプロジェクトに呼び込み、リソース不足を補完する。
これにより、one netは単なるSES企業の枠を超え、顧客企業に多面的なITソリューションを提案できる体制を整えています。
大手企業から中小企業まで幅広い顧客層を対象とし、プロジェクトの規模に応じて柔軟に対応することで、事業の継続性と収益性を向上させているのでしょう。
インサイドセールス事業
近年、非対面での営業手法であるインサイドセールスが注目を集めています。one netは、コロナ禍によるリモートワークの普及や営業手法のオンライン化といった流れを捉えて、インサイドセールス事業にも参入してきました。
インサイドセールスとは、メールやオンライン会議、SNSなどを活用し、直接対面することなく見込み顧客との接点を創出・育成する営業アプローチです。one netがIT技術やデジタルツールの活用に長けている点を踏まえると、以下のような形でサービス提供を行っていることが推測されます。
- SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)ツールの導入コンサル
- 見込み客とのオンライン商談やフォローアップの代行
- 分析データに基づく営業戦略の立案支援
これにより、企業の営業活動を効率化すると同時に、顧客への深いアプローチが可能になり、継続的な売上向上をサポートすることが期待できます。
ソリッドベンチャーとしての成功要因
one netがソリッドベンチャーとして事業を多角化しながら成功を収めている要因として、以下のポイントが挙げられます。
- 堅実なキャッシュフローの構築
SES事業の特徴を活かし、毎月の人件費ベースで安定収入を確保。これにより新規事業へ投資する資金を自社で賄いやすい。 - IT expertise の発揮
SES事業で磨いたエンジニアリングスキルやプロジェクトマネジメント力を基盤に、アライアンス事業やインサイドセールス事業へ展開。ITが求められる領域で優位性を発揮。 - 経営の独立性と柔軟性
外部投資家からの資本を受けず、自己資金のみで事業を進めるため、大きな経営方針の変更も代表の裁量で決定可能。経営判断のスピードが速く、戦略変更に柔軟に対応できる。 - ネットワーク効果と提携戦略
アライアンス事業ではパートナー企業との関係構築を通じて、顧客基盤や専門人材を共有できる。「単独で大きくなる」のではなく、協業の中で市場ニーズを捉える姿勢が特徴。 - 非対面営業への早期対応
コロナ禍の影響もあり、インサイドセールスなどオンラインを中心とした営業手法が注目を集めた。これをいち早く事業化し、成長の柱に据えたことが、差別化要因となっている。
「ソリッドベンチャー」としてのone net
one netは、2016年の創業以来、SES事業を軸に安定した収益基盤を築きながら、アライアンス事業やインサイドセールス事業といった新規領域へ巧みに進出することで、事業多角化を成功させてきました。外部資本を導入せず、自己資金でリスクを管理しながら成長する姿勢は、ソリッドベンチャーらしい特徴を強く示しています。
- 創業当初のSES事業
IT人材を活かし、安定的な収益源を確保。 - アライアンス事業の展開
パートナーシップを通じたソリューション共同開発や顧客基盤拡大。 - インサイドセールス事業の参入
非対面営業のニーズに応えるデジタルマーケティング能力の発揮。
これらの取り組みを可能にしている背景には、代表の星祐貴氏が情報通信会社で培ったノウハウや人脈、そしてIT業界への深い理解があると推測されます。
SES事業の運営ノウハウとキャッシュフローを最大限活用しつつ、協業先とのアライアンスやオンライン化の波を捉えた営業手法を導入することで、多角化によるリスク分散と成長を同時に実現しているのです。
ソリッドベンチャーとして独立性の高い経営を続けることで、変化する市場ニーズに合わせたサービスの拡充が可能になるはずです。
one netの事例からは、自己資金をもとに安定的なキャッシュフローを確保しつつ事業を拡大するソリッドベンチャーの成長モデルをうかがい知ることができます。経営の独立性と社員の専門性を柱に、多角的なサービスを展開する企業として、今後もその動向に注目が集まると考えられます。