2024.11.22
「ソリッドベンチャーとしてのSpeee」著者の視点
株式会社Speee(スピー) は、2007年設立のIT企業であり、代表取締役CEOを務める 大塚英樹 氏が率いています。
元々、同社はインターネット広告事業からスタートし、特にSEOやリスティング広告といったWebマーケティング施策に強みを持ちました。
設立後、着実に顧客企業を獲得しながら黒字を確保し、自己資金で事業を回しながら徐々に組織を拡大してきた点が、いわゆる「ソリッドベンチャー」の特徴を体現しています。
創業者のバックグラウンド
- 大塚英樹 氏(1985年 埼玉県生まれ)
大塚氏は若くしてメディア関連事業を起こし、2011年に事業譲渡を経験。同年、25歳でSpeeeに参画し、代表取締役に就任しています。若くして起業・事業譲渡を経験したことからもわかるように、インターネットビジネスの最前線でトレンドをつかみ、柔軟かつ大胆な経営判断を下せるリーダーシップがSpeeeの成長を後押ししてきたと言えます。
創業当初の事業モデル
- インターネット広告事業
設立当初からSEO/SEM、アフィリエイト広告、ディスプレイ広告運用など、幅広いWebマーケティング手法を提供していました。 - 顧客企業のWebマーケティング支援
いわゆる“広告代理”的な性格を持ちつつ、単なる仲介にとどまらず、自社で培ったテクノロジーやデータ分析をサービスに落とし込むことで付加価値を高めていました。
こうした受託中心のビジネスモデルでまず利益を生み出し、資金の蓄積とノウハウの強化につなげるという形がソリッドベンチャーの典型といえます。
ソリッドベンチャーの視点:自己資金での堅実成長
ソリッドベンチャーは、ベンチャーキャピタルからの大型投資を受けずに、自己資金・事業のキャッシュフローを回しながら成長するのが特徴です。
Speeeも一貫して外部からのエクイティファイナンスを行わずに事業を拡大してきました。そのメリットとしては以下が挙げられます。
- 独立性の維持
投資家や株主の意向に左右されにくい体制を持ち、経営判断をスピーディに進められる。 - 長期的視点の意思決定
VCのEXIT(株式売却やIPO)を急ぐ圧力から解放され、長期的に事業を育てる余地がある。 - 組織文化の一貫性
資本政策に左右されず、創業時のビジョンやコアバリューを継続的に体現しやすい。
Speeeは、インターネット広告事業という比較的利益率の高い分野からスタートしたこともあり、早い段階で安定的な収益を得やすかったと推測されます。
そこから得たキャッシュを後述する事業多角化や研究開発、データ分析の強化に再投資することで、安定成長を遂げてきたのです。
事業の拡大手法:データドリブンなマーケティングへ
インターネット広告事業の発展
設立当初に軸となっていたSEOやアフィリエイト広告のサービス展開は、競合も多い領域です。しかしSpeeeは、
- 徹底したデータ分析に基づく施策提案
- 顧客ビジネスを深く理解した上でのコンサルティング
を強みとして差別化を図りました。データ分析力とテクノロジーの活用は、単なる広告代理店とは一線を画す付加価値を生み出し、顧客ロイヤルティを高める要因となりました。
マーケティングインテリジェンス事業
インターネット広告で培ったノウハウをさらに発展させ、マーケティングインテリジェンス事業として展開した点がSpeeeの大きな飛躍です。
マーケティングインテリジェンスとは、データ分析を駆使し、市場の動向・顧客行動・競合状況などを包括的に把握・予測して、経営戦略やマーケティング施策に落とし込む手法を指します。
Speeeは自身を「データドリブンな企業」と位置づけ、クライアント企業に対して以下のようなサービスを提供することによって高い付加価値を実現してきました。
- 顧客データの可視化・分析基盤の構築
- 最適な広告戦略立案・運用サポート
- 売上/顧客獲得の予測モデル構築
これらを通じて、クライアントのビジネス成果にコミットする形でリピート率を高め、業績を安定させながら拡大していきました。
DX(デジタルトランスフォーメーション)事業への参入
レガシー産業の変革支援
近年、Speeeは「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションを掲げ、従来型のビジネスモデルにIT・データの知見を取り込むDX支援事業を加速させています。
具体的には、不動産や金融、流通などのレガシー産業に対してコンサルティングを提供し、業務プロセスのデジタル化からデータ利活用の仕組みづくりまで一貫してサポートする形です。
- 不動産DX:アナログ業務の多い不動産業界に対し、顧客管理システムや営業支援ツールの導入コンサルティングを行う。
- 金融DX:金融機関向けにデータ分析や顧客セグメントの精緻化を支援し、新商品開発や営業活動の効率化を実現。
Speeeの強みであるテクノロジーとデータドリブンなアプローチを、広告分野だけでなく産業全体に広げることで事業領域を拡大している点は、多角化戦略の成功例と言えます。
事業多角化の成功要因
- コアコンピタンスの明確化
Speeeが最も得意とするデータ分析とテクノロジーを、あらゆる業界・業種のDXに活かせる形で水平展開した。 - 顧客目線のソリューション提供
レガシー産業の課題を深く理解し、単なるツール導入ではなく、業務フロー全体の最適化や組織変革を視野に入れたコンサルを行うことで付加価値を高めた。 - 自己資金経営による柔軟性
外部投資家の短期リターン要求に縛られず、新規事業を立ち上げる際にも長期視点で投資できる環境が整っている。
市場・地域
主要市場
- インターネット広告市場
国内のインターネット広告費は、ここ10年以上右肩上がりで伸びています。スマートフォン普及による利用者拡大、デジタルマーケティング技術の進化などが市場拡大を後押ししてきました。 - マーケティング・DX支援市場
デジタル技術とデータ分析を駆使して企業の課題を解決するサービスは、コロナ禍以降さらに需要が高まりました。業種業態を問わずDXへの関心が急上昇している状況です。
Speeeは、この2つの大きな成長領域を自社の強みである「データ×テクノロジー」でカバーしている点が特徴です。
ソリッドベンチャーとしてのSpeeeが示す意義
外部資金に頼らないメリット
Speeeが外部資金を一切調達せずにここまでの規模と多角化を実現してきた点は、日本のスタートアップ環境において非常に興味深い事例です。
大塚氏が若くして経営に携わり、なおかつ独自の経営理念とデータドリブンな戦略を推進できた背景には、独立性を維持しつつ得られる利益を再投資する好循環があったと推察されます。
「解き尽くす。未来を引きよせる。」のミッション
Speeeの企業メッセージは、単なる営利目的ではなく、デジタル技術を活用した社会課題の解決を強く意識したものです。
レガシー産業のDX支援は、日本企業全体の生産性向上や構造改革に直結する重要領域であり、同社の取り組みは社会的にも大きなインパクトを持ち得ます。
ソリッドベンチャーの経営を貫くことで、短期的な利益だけでなく、長期的に社会を変革するような事業投資にも挑戦しやすいのが強みです。
エンジニア・コンサルタントの活躍の場
Speeeはデータサイエンティストやコンサルタントを社内に抱え、DX案件などの新規領域を積極的に開拓しています。
実際に大塚氏は若くして起業家・経営者として成功をおさめ、社員に成長機会を与える企業文化を醸成してきたと言われています。
外部投資家の意向に左右されにくい環境下で、企業と従業員が一体となって学習・成長できる場を提供している点も、ソリッドベンチャーとしての典型的な強みといえるでしょう。
Speeeが示すソリッドベンチャーの未来像
本稿では、株式会社Speee を「ソリッドベンチャー事例」という視点から分析しました。同社の特徴は以下のとおりです。
- インターネット広告の受託事業からスタートし、データ分析とテクノロジーで差別化
- マーケティングインテリジェンスやDX支援といった新規領域へと多角化を進める
- 外部資金調達を抑え、自己資金と事業収益を再投資することで独立性と長期視点を維持
- 社会課題の解決(レガシー産業のDXなど)に向けた取り組みを強化し、価値を高めている
Speeeの実績は、単にITベンチャーとしての成功だけではなく、自力で稼ぐ力を持ち、安定したキャッシュフローで新規事業に挑戦し続けられる企業文化の形成にあると言えます。
ベンチャーキャピタルからの巨額出資に頼る高速成長とは異なる道筋ではありますが、一歩ずつ着実に事業を拡大してきたことは、「ソリッドベンチャー」の手本ともいえるでしょう。
一方で、競合が増えるDX市場においては、スピード感や最新技術への対応が欠かせず、さらなる人材確保・組織強化が課題です。こうしたチャレンジを克服しながら、Speeeが新しい産業の変革に貢献していくことが期待されます。
外部資金に依存しない経営だからこそ可能な大胆な挑戦、そしてデータドリブンな姿勢による独自価値の創出――それらを両立させるSpeeeの軌跡は、今後もソリッドベンチャーとして多くの起業家や投資家から注目を集め続けるでしょう。