ソリッドベンチャーは既存事業を活かした新たな挑戦?

2024.09.12

筆者:エンジェルラウンド株式会社 大越匠

ハイライト

  • 安定した収益基盤と新規事業の両立
  • 既存事業の最大活用
  • 段階的な成長と組織の強化

ソリッドベンチャーは、既存の収益性のある事業を基盤としながら、安定したキャッシュフローを生み出しつつ、新たな挑戦を模索する企業形態を指します。これは、急成長を目指して短期間で成果を出すスタートアップとは異なり、より堅実なアプローチです。ソリッドベンチャーは、既存事業の安定性を活かし、リスクを抑えながら新しいビジネス機会を探るという特徴があります。これにより、企業は長期的な成長と持続可能なビジネス運営を目指すことができるのです。

既存事業を活かすメリット

安定した収益基盤がリスクを軽減する

ソリッドベンチャーの最大の利点の一つは、既存事業がキャッシュフローを生み出し、新規事業に挑戦する際のリスクを軽減できることです。既存事業が堅調であれば、企業は新しい市場やプロダクトに対して積極的に挑戦でき、失敗しても経営全体に大きな影響を与えることは少なくなります。例えば、ソフトウェア企業のSHIFTは、既存の安定したテストサービス事業を基盤に、新たなソフトウェア開発支援サービスへと事業を拡大し、成功を収めました。安定した事業があったからこそ、新規事業に対してもリスクを恐れず取り組むことができたのです。

既存顧客基盤を活用した市場拡大

ソリッドベンチャーは既存の顧客基盤を活用し、新たなプロダクトやサービスを展開する際に強力なアドバンテージを持っています。既に築かれた信頼関係があるため、新しい事業を導入する際の市場参入障壁が低くなり、リスクが少なくなります。例えば、M&Aセンターは既存の顧客基盤を活用しながら、M&Aコンサルティング以外のサービス(例えば財務コンサルティングや企業評価)に徐々に進出し、収益を多角化しました。このように既存の信頼関係を利用しながら新しい市場に進出することは、特にリスクが高い新規事業を展開する上で大きな強みとなります。

人材と組織の強化

既存事業が安定している企業は、より優秀な人材を引き寄せ、組織体制を強化することができます。企業が安定した収益基盤を持つと、人材の採用や育成にリソースを割く余裕が生まれます。例えば、コンサルティング企業のベイカレントは、安定したクライアントベースと収益を背景に、人材採用や研修に多大な投資を行いました。これにより、優秀な人材が集まり、さらに高付加価値のサービスを提供することで市場での競争力を高めています。

新規事業へのリスク管理

段階的な成長:ジワ新規の展開

ソリッドベンチャーでは、一度に大きなリスクを取るのではなく、既存事業との関連性が高い新規事業を段階的に展開する「ジワ新規」の戦略が有効です。このアプローチは、既存顧客や既存市場をベースに、新しいビジネスを少しずつ拡大していくことで、リスクを最小限に抑えることができます。たとえば、Appleは、既存のハードウェア(iPhoneやiPad)を基盤に、徐々にサービス事業(App StoreやApple Music)を拡大し、事業の多角化と収益の安定化を実現しました。既存事業とのシナジーを最大限に活用することは、ソリッドベンチャーにとって不可欠な戦略です。

既存事業とのシナジー効果を最大化

新規事業が既存事業と連携することで、相乗効果を生むことができれば、事業の成功確率は高まります。既存事業が持つリソースやノウハウを新規事業に適用することで、成長を加速させることができるのです。たとえば、SHIFTは、既存のソフトウェアテストの知識を活かして、新しいソフトウェア開発支援事業を立ち上げ、両事業間でのシナジー効果を最大化しました。これにより、新規事業の成長を促進し、既存事業にも新しい顧客を取り込むことができました。

ソリッドベンチャーを目指すためのアクションプラン

既存事業の強化

まずは既存事業を強化し、安定した収益を確保することが最優先です。既存事業がしっかりとしたキャッシュフローを生み出すことで、経営者は新規事業に対しても積極的に挑戦できる余裕を持つことができます。このためには、既存市場での競争優位を維持しつつ、顧客基盤をさらに強固にしていくことが重要です。

段階的な市場拡大の計画

新規事業への挑戦は慎重に段階的に行うべきです。既存事業との関連性が高い分野で新しいプロダクトやサービスを少しずつ導入し、市場の反応を見ながら調整していくことが推奨されます。このようにリスクを分散しながら市場拡大を進めることで、失敗のリスクを最小限に抑えながら着実に成長を図ることが可能です。