既存事業を強化するソリッドベンチャーの手法

2024.11.19

筆者:エンジェルラウンド株式会社 大越匠

ハイライト

  • 顧客の隠れた課題を深掘りし新たな価値提供で事業競争力を強化する。
  • コア事業のプロセスを改善し生産性と顧客満足度を向上させる。
  • 「ジワ新規」で新サービスを追加し既存顧客に付加価値を提供する。

顧客ニーズの深掘りと強化

既存事業を強化するための重要な要素は、既存顧客のニーズのさらなる深掘りです。顧客との対話を通じて隠れた課題を掘り起こし、それに応じたサービスや製品の改良を施すことで、事業の競争力を高めることが可能です。例えば、ナハト社はSNS広告代理サービスの提供を開始した際、顧客から寄せられる細かなリクエストに耳を傾けました。その結果、単なる広告配信にとどまらず、各プラットフォームに適したプロモーション方法を追加導入することに成功しました。このような「ジワ新規」のアプローチにより、顧客満足度を高め、ナハト社の収益も向上しました。このように、顧客との継続的なコミュニケーションを通じて、隠れたニーズを引き出し、それに応えることで既存事業を強化し、市場での立ち位置を強固なものにすることができます。

コア事業のプロセス改善と効率化

既存事業を強化するためには、内部プロセスの効率化も重要です。特に、運用面での改善を図ることで生産性を向上させ、結果として収益性の強化につなげることができます。Grand Central社の例がこの点で顕著です。同社は営業コンサルティングのプロセスを体系化し、新卒社員が短期間で即戦力になれるような教育体制を構築しました。これにより、営業スタッフ個々の能力に依存することなく、安定した品質で顧客に価値を提供し続けることが可能となり、クライアントからの高評価を得ることができました。また、社内のワークフローを見直し、無駄な手順を削減することで、クライアント対応のスピードと精度が向上し、顧客満足度も大幅に向上しました。このようにコア事業のプロセス改善を図ることは、既存事業の強化において不可欠な要素と言えるでしょう。

「ジワ新規」での付加価値創出

既存事業を強化する上で効果的な手法として、「ジワ新規」による付加価値創出があります。「ジワ新規」とは、既存事業に隣接する新たなサービスや製品を導入することで、顧客に追加の価値を提供する取り組みを指します。例えば、レバレジーズ社は、SES事業から派生して人材教育サービスを展開し、既存クライアントに付加価値を提案しました。このサービスにより、クライアント企業の中でより質の高い人材を育成することが可能となり、同社との関係が一層強化されました。既存事業と親和性が高い分野で新たな取り組みを行うことは、リスクを抑えつつも事業の幅を広げ、収益の多様化にも寄与します。「ジワ新規」の戦略は、新規事業立ち上げの不確実性を低減し、既存顧客との長期的な関係を強化する効果的な方法です。

まとめ

既存事業を強化するためには、顧客ニーズの深掘り、プロセスの改善、「ジワ新規」の導入といった多角的なアプローチが必要です。顧客の隠れたニーズを理解し、それに応えることで信頼関係を深めることができます。内部プロセスの効率化は、業務の生産性を向上させ、事業の安定性を高めます。そして、「ジワ新規」により既存事業の延長で新しい付加価値を創出することが、企業としての持続的な成長につながります。これらの取り組みを組み合わせることで、ソリッドベンチャーは既存事業の強化と収益基盤の安定化を同時に実現し、市場での競争力を一層高めることが可能となります。