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ソリッドベンチャーとスタートアップ、起業家にとっての選択肢の違い
公開日:2024.11.20
更新日:2025.3.29
筆者:エンジェルラウンド株式会社 大越匠

ソリッドベンチャーとスタートアップ──両者は起業の世界で「どのように成長を目指すか」という点で大きく異なる道筋を歩みます。ソリッドベンチャーは安定収益を核に長期的な成長を図り、スタートアップは大胆な資金調達とリスクテイクで急成長を狙う形です。しかし、どちらの選択肢にも一長一短があり、起業家自身のリスク許容度やビジョン、事業経験といったファクターによって最適解は変わります。本記事では、それぞれの特徴やリスクとリターンのあり方、選択する際のポイントを深堀りし、起業家にとって最良の道を探る一助となる情報をお届けします。
ハイライト
- ソリッドベンチャーは安定収益を起点に、リスクを抑えながら持続的成長を図る。
- スタートアップはハイリスク・ハイリターン路線で、大きな資金調達と急拡大を狙う。
- 起業家に合う道は、資金調達力やリスク許容度、そして描くビジョン次第で大きく変わる。
ソリッドベンチャーとスタートアップ──どこが違うのか
ソリッドベンチャーは、まず手堅い収益を確保し、それを基盤として新規事業やサービスを段階的に展開していくスタイルを取ります。既存市場や成熟した領域から収益を得ながら、無理のない範囲で新たなチャレンジを積み重ねるため、“持続可能”かつ“安定性”が強みといえるでしょう。
一方でスタートアップは、革新的なアイデアを武器に、ベンチャーキャピタルなどの外部資金を活用して一気に市場シェアを拡大する高リスク型のモデルをとります。ここでは、スピードが最優先される反面、もし市場の変化や競合の攻勢に対応できなければ、大きな負債や経営破綻に陥るリスクも高まるのが特徴です。
“安定収益”を重視するソリッドベンチャー
- 既存市場への参入で堅実な売上を確保
- 収益をさらに新事業へ再投資し、リスクを薄めながら拡大
- 資金調達に追われず、自分たちのペースで成長戦略を描ける
“革新”と“スピード”を追求するスタートアップ
- 画期的な製品・サービスで短期間に市場を席巻
- 資金力・競合環境次第で、一発当たれば巨大リターンだが、失敗時の損失も大きい
- 投資家からのプレッシャーを受けつつ、成長を急ぐ姿勢が求められる
リスクとリターン──どこまでなら踏み込めるか
スタートアップが魅力的に映る理由の一つは、「急拡大に成功すれば莫大なリターンを得られる」という点です。AirbnbやUberなど、世界的に成功した例を見るとわかるように、“市場を変える”レベルの革新性が強みとなります。
しかし成功確率はそう高くなく、初期段階で大量の資金を投入しても成果が伴わないと、あっという間に経営破綻へ追い込まれます。
一方、ソリッドベンチャーは安定したキャッシュフローを大切にし、無理のない投資額で少しずつ事業を拡張していくのが基本方針です。このスタイルは、巨額の調達には向きにくい反面、着実に利益を積み上げながら倒産リスクを低減できるのが魅力。
万が一、新規事業が失敗しても“本業”や“既存サービス”で被害を最小限にとどめやすいのが大きなメリットです。
リスク回避力を高めるソリッド思考
実際の事例として、Speee社はSEOコンサルなど既存のデジタルマーケティング領域で売上を確保し、その利益を新規事業へ段階的に投資する手法で事業ポートフォリオを増やし続けました。ハイリスクな大型案件に突然賭けるのではなく、まず堅実に足元を固める。この考え方が“ソリッドベンチャー”の象徴といえます。
選択の指針──自分に合った起業スタイルを探る
「どちらの道を選べばいいのか?」という問いは、起業家一人ひとりの条件によって異なります。大きな勝負を狙うか、堅実に足場を築くか──この分岐点を判断するために、いくつかの視点を持ちましょう。
3-1. リスク許容度と資金調達力
スタートアップは外部投資家からの資金を積極的に引き込むことで、一気に事業を拡大するモデルです。そのためにはビジョンの明確さやプレゼンテーション力、加えて投資家が納得する成長のシナリオが必須となります。逆に言えば、そのシナリオがうまく進まなければ投資が途絶え、一瞬で経営が傾くリスクも大きいのです。
一方、ソリッドベンチャーは自己資金や安定収益から生まれるキャッシュフローで無理なく事業を進めます。必要に応じて銀行借り入れを行う場合もあるでしょうが、投資家からの強い成長プレッシャーに晒される機会は少なく、自分たちのペースで舵を切れるのが魅力です。
ビジネス経験やチームのスキルセット
チームにテック系エンジニアやマーケターが多く、短期間で革新的なプロダクトを作り出せる自信があるなら、スタートアップ的な動きがハマるかもしれません。逆に、既存領域でも安定収益が見込めるビジネスモデルを温めていたり、まずは“堅実に稼ぐ”ことで経営を安定させたいと考える場合は、ソリッドベンチャー型で進めたほうが確実性が高いでしょう。
将来像と起業家の性格
急成長を狙うスタートアップはどうしても組織拡大のスピードが速く、社内ルールや仕組みが整わないまま大人数を抱えることになりがちです。これは、“スピード最優先”が基本原則だから。
対して、ソリッドベンチャーは徐々に組織を拡大しながら、軸となるビジネスに安定収益を見出していきます。じっくり組織文化を育てていくことを好む起業家や、アジリティより安定性を優先する人には合致しやすいスタイルです。
ソリッドベンチャーの具体例から見る優位性
ここでは、ボードルア社やINTLOOP社などの動きを参照してみましょう。
- ボードルア社:創業当初はSES事業で安定収益を生みながら、新たなITインフラサービスへ着実に進出。社内で若手育成やノウハウ蓄積を行い、投資家に振り回されることなく自社軸で拡大を続けています。
- INTLOOP社:もともと製造業向けのコンサルティングから入り、そこで培った実績を背景にフリーランス支援やDX人材マッチングへと事業領域を“横に”拡張。既存顧客との信頼関係を活かして新分野へシームレスにアクセスし、堅実な成果を重ねている例といえます。
これらに共通するのは、“まずは既存で稼げる確実な領域”で安定を築き、それから徐々に新チャレンジを広げるという一貫性。ソリッドベンチャーならではの堅実性がかいま見えます。
スタートアップに軍配が上がるシーンも
もちろん、ソリッドベンチャーがすべての状況で最善というわけではありません。
例えば、社会の仕組みを根底から変える革新的プロダクトを構想している場合、スロースタートでは市場を先行者に奪われてしまう恐れがあります。新興のテックトレンドで「今が勝負時」というタイミングなら、大型資金を導入してスタートアップ方式で一気にシェアを獲得するほうが適しているかもしれません。
- 例:世界的にバズるプロダクトを目指すアプリやサービス
- 新産業を切り拓く可能性があり、資金面・成長面で時間勝負となるケース
このように、“スピード重視”が鍵を握るビジネスプランなら、スタートアップ路線こそが最強の選択肢になり得ます。
「どちらを選ぶか」で変わる経営者の生き方
ソリッドベンチャーは、基本的に“経営者自身が長く会社の舵取りをし続ける”イメージが強いです。外部資本にさほど頼らないため、上場やM&Aを急がず、経営者の意思が事業に反映されやすいのです。家族経営的なアプローチで100年企業を狙うなら、この方向性が自然でしょう。
スタートアップの場合は、“数年でIPOやバイアウトを行い、経営陣が大きなリターンを得る”というシナリオが織り込まれることが多いです。
多くの投資家が関わるため、経営判断には“株主の期待に応える責任”がつきまとい、自由に動ける幅が狭まる面もあります。その代わり、大成功した際の“資本ゲイン”は桁違いに大きくなる可能性も秘めています。
これから起業する人への提言──自分の軸をぶらさない
起業に踏み切る人にとって大切なのは、自分がどんな会社を作りたいか、そのためにどの程度のリスクを負えるかをはっきりさせることです。ソリッドベンチャーもスタートアップも、それぞれに異なる世界が広がっており、成功パターンも失敗パターンも多岐にわたります。
- 挑戦的な技術革新で一発当てたい:スタートアップ的な戦略が向いている
- まずは自社でコツコツ稼ぎ、堅実に長期経営を目指したい:ソリッドベンチャー型が合致
選択を誤ると、資金繰りが合わなくなったり、組織の方向性が迷走したりしてしまうので、ビジョンに基づいて慎重に検討することが求められます。
持続的成功を掴むための視点──長く走り続けるか、一気に跳ねるか
ソリッドベンチャーとスタートアップの比較は、単に「リスクが低いか高いか」「収益重視か成長重視か」だけにとどまりません。そこには、起業家としての生き方や、どんな社会的価値を生み出したいかというビジョンの問題も含まれます。
- ソリッドベンチャー:自社の収益力を育み、社員や顧客と腰を据えた関係を築きながら、息の長い経営を続ける道
- スタートアップ:短期的な爆発力を大切にし、世界規模のマーケットで革新的なプロダクトを出して大きく勝負に出る道
どちらが正解かは、事業領域や個々の目標によって変わります。安定性と持続性を重視して少しずつ事業を拡げたいならソリッド、リスク覚悟で大きな果実を取りにいくならスタートアップがおすすめ。自分が何を望み、どういう未来を創りたいか──その問いに率直に向き合うことが、成功へ続く第一歩になるはずです。